第6話
時刻は昼下がり、迎えた二回戦である。
優勝候補相手に鮮烈な勝利を収めた新人がいる――噂はまたたく間に会場に広まっており、ヴァートの二回戦の舞台である第二試合場の周りには、数多くの観客たちが詰め掛けていた。
ヴァートの対戦相手は、ナイジェル・ギランという短躯の男である。年齢はヴァートより二つか三つ上、二十歳前後であろう。
ギランは利き腕の右手に片手剣、そして左手には大盾を構えている。防具は薄手の鉄を張り合わせたもので、重すぎず軽すぎず、この大会においては標準的であるといえよう。
試合場の開始位置にてギランと向き合ったヴァートは、ギランの姿を上から下までくまなく観察する。ころころとした樽のような、一見肥満体にも見える体型である。しかし、防具の隙間から露出した二の腕の部分からは、鍛え込まれた筋肉を垣間見ることができる。おそらく、その甲冑の下にはみっしりと筋肉が詰め込まれていることだろう。
(しかし、盾持ちか――戦うのは初めてだな)
のちにヴァートが知ったことだが、このギランの流派はカラガム流といい、大昔にオーハラ流から枝分かれした流派ということだ。
片手に武器、片手に盾というのは、無論のこと防御重視の戦い方である。
まず
守りに徹するという戦いかたが、勇猛果敢を尊ぶ多くのシーラント人の気質に合わないということもあるだろう。
ヴァートがたびたび訪ねるローウェル道場は、音に聞こえた名流だけあって、さまざまな流派の人間が出稽古に訪れる。しかし、盾を持つ流派の人間をヴァートは一度も見たことがなかった。
「……では、開始線へ」
審判の声に従い、両者は開始位置へ下がる。
ヴァートは木剣を両手で持ち、正眼に構える。一方のギランは、盾を持つ左手を前に、半身に構えた。
「はじめッ!」
先に動いたのは、ヴァートである。
防御重視の戦法を取る相手に対し、様子見をしても始まらぬ。自ら打ち込んでいかねば、いつまでたっても試合は動かないだろう。
ギランから見て左に一歩踏み込むそぶりを見せてから、一気に右方向へ飛び出す。鍛え込まれたヴァートの足腰から生み出される瞬発力は相当なものだ。弓弦を離れた矢のごとく、ヴァートは一気にギランの右側面に回りこんだ。
「はあッ!!」
生半な相手ならば、この一撃で勝負が決していたかも知れぬ。
しかしギランは、ヴァートの踏み込みに対し鋭い反応を見せた。横に跳んで距離を稼ぎつつ身体を捻り、上段から打ち込まれたヴァートの木剣を、その大盾でもって弾いてみせたのだ。
観客たちの目からは、ギランが完全に側面を取られたかのように見えたことだろう。丸っこく、いかにも鈍そうに見えるギランが、意外なほどに俊敏な反応を見せたものだから、観客たちからは喝采の声が上がった。
この手の体型を持つ武術家は、見た目からは想像もつかぬほど俊敏であることが多い。これは、ヴァートが自身の体験から導き出した知識である。ローウェル道場の門弟で、現在は警備部に勤めるエドマンド・ベイリなども同類だ。
牽制の横薙ぎを放ち、大きく跳び退って距離を取りながら、ヴァートは次なる一手を考える。
(簡単に横や後ろを取らせてくれる相手じゃなさそうだ――なら、手数で攻め切る!)
今度は、正面からギランに打ちかかる。
「ふッ!」
中段の突きから体を反転させて相手の足元を薙ぎ払いにかかるヴァートの動きは、ガルラ八式という型のうち、「第四式」と呼ばれるものの始動部分である。
足元の一撃を跳んでかわした相手に対し、逆袈裟に斬り上げるのが本来の「第四式」であるが、ギランは跳びながらも身体の正面を盾でしっかりと守っている。ヴァートはとっさに、盾に向かって前蹴りを放った。無論痛手を与えられるものではないが、体勢を崩すには十分である。
着地ぎわに蹴りを食らったギランは、大きく一歩よろめいた。
好機――ヴァートは一気にギランに詰め寄ると、攻勢をかけた。
時おり幻惑を交えつつ、矢継ぎ早の連撃を放つヴァートであったが、ギランもなかなかに粘る。崩された体勢からも、その盾を巧みに操り、ヴァートの猛攻を凌いでいく。
十合ほども打ち込んだが、ヴァートの剣は三度ギランの甲冑を叩いたのみ。これでは有効打とはならぬ。
こうなると、攻めているほうに焦りが出てくる。ギランの防御を強引に崩そうとしたのか、ヴァートの剣には徐々に粗さが見え始めた。
「いかぬ」
試合場脇のマーシャが呟いた、そのときである。
「あッ!?」
ヴァートの放った袈裟斬りが、ギランの盾の表面に触れようかという瞬間――ギランは盾をすっと引くと、斬撃に対して角度をつけた。
すると、ヴァートの剣は盾の表面を滑り、大きく流されたのである。今度は、ヴァートの体勢が崩されてしまった。
緩い曲面からなる盾の表面を利用し、敵の攻撃を受け流す。特に、盾を破砕しうる重量のある武器と相対する場合に重要になってくる、なかなかに高度な技術である。
オーハラ流の長剣では盾を破壊するのは難しい。なので、あえてこの技術を用いる必要はないのだが――ギランは、大振りになったヴァートの一撃を見逃さず、それを受け流すことでヴァートの体勢を崩してみせたのだ。
慌ててギランに向き直ろうとするヴァートであったが、そこへギランの反撃が襲い掛かった。
「ぐうッ!?」
肩口に大きな衝撃を受け、ヴァートは大きく吹き飛ばされた。ヴァートはとっさに自ら後方に転がり、素早く起き上がった。この場合、無理に踏ん張ろうとするのは愚作であっただろう。不安定な体勢のままギランの追撃を受けることになったであろうことは、容易に想像できよう。
盾撃には大まかに二種類あって、ひとつは盾を振りかぶり、
前者は、盾の重量が縁の部分の狭い面積に集中するため、かなりの威力を誇る。まともに当たれば、鉄兜の上からでも人間の頭部を破壊しうるほどだ。反面、動作が大きいため敵に読まれやすいという欠点も抱える。後者は、殺傷力には欠けるものの、予備動作は小さく、密着した状態からでも繰り出すことができる。
ヴァートが食らったのは、後者のほうである。牽制のために使われることの多い技であるが、ヴァートの体重が軽いこともあり、この盾撃は効果覿面であった。
「ヴァートの失策だな」
マーシャが渋い顔をする。
ギランの盾の扱いは、確かに巧みであった。しかし、ヴァートのほうとしても、どこかでギランが反撃に出ることを想定してしかるべきであった。
「ヴァートもまだまだ若いということにござるな」
ヴァートとさほど変わらぬ年齢のアイの言い草に、ミネルヴァは思わず笑みを漏らす。しかし、たびたび語られている通り、アイは波乱万丈の人生を送ってきている。その言葉には、実年齢以上の重みがあるはずだ。
「しかし、あのギランという男の技量が優れているのも確かだ。あれほどの盾遣いはそういまい」
マーシャが、ギランを評した。
オーハラ流の剣は、長さも重さも標準的で、手数とさまざまな状況への対応力に優れるといわれる。しかし一方で、射程は短めで一撃の威力に劣るのが欠点である。
実のところ、オーハラ流と盾との相性はあまりよろしくない。
「ヴァートがあの男をいかにして攻略するか、見ものだな」
一方、試合場。ヴァートは己の軽率さを、深く恥じ入っているところであった。
(相手の思う壺に、まんまとはまってしまった……)
ヴァートは剣を握りなおしつつ、ギランの表情を伺う。わずかにギランの口の端が上がった。表情の変化は小さかったものの、してやったりとでも言いたげな笑みであった。
猛然とヴァートが打ってかかる。
先ほどよりもさらに烈しい連撃を、息もつかせぬほどの速度で叩き込んでいく。
しかし、ギランは動じぬ。大盾で半身を守りつつ、軽快な足取りでヴァートの間合いに持ち込ませない。十数合も渡り合ったが、ヴァートの刃はギランに届かない。
「あのフェイロンって若造、ガスコインを倒したって言うから期待してたんだが、まだまだ青いな」
マーシャたちの近くで観戦していた二人組みの男の言葉だ。
「ああ、一発
物知り顔に語る二人は、どうやら武術愛好家のようである。
この二人に限らず、多くの観衆が同じ感想を抱いていることだろう。闇雲に攻めるだけで、ギランの盾を攻略できる気配は一向にない。攻め疲れして隙ができたところに、ふたたび盾による一撃――それが、観客たちの思い描いた絵図であろう。
「しかし――ヴァートさんがそこまでの考えなしなはずはありませんわ」
「然り。あれは、何かを狙っている眼にござる」
二人の言葉に、マーシャも頷く。
ヴァートも、血気にはやる年頃である。大勢の観客たち、そしてマーシャが見守るなか、ギランの見事な反撃を食らい、頭に血が上っていないといえば嘘になるだろう。
しかし、ハミルトン道場で鍛えられ、いくつもの死線を潜り抜けてきたヴァートの精神は、この程度でわれを忘れるほど軟弱ではない。
がむしゃらに打ち込んでいるだけに見えるヴァートの動きにも、明確な目的があった。
と、ヴァートは軽く腰を沈めた体勢から鋭い突きを繰り出した。しかし、間合いがいかにも中途半端である。
この一撃は、完全にギランに見切られていた。
ギランは突きを盾で受けると同時に、身体を半回転させる。剣先が盾によって逸らされたヴァートの体勢は、前方に流れた。
「ぬうんッ!!」
盾による一撃――盾を構えたままの体当たりに近い、先ほどよりもはるかに威力のある一撃である。
とても、回避できる距離ではない。ヴァートはその場で上体を反転させ、ギランに背を向けた。せめて背中で受けて、少しでも痛手を減らそうとでもいうのだろうか。
巨岩を叩いたかのような、鈍い衝撃音。軽いヴァートの身体が吹き飛ばされるさまを、多くの観客が想像したことだろう。
しかし――現実には間逆のことが起きていた。すなわち、ギランの身体が大きく宙を舞い、背中から地面に叩きつけられていたのである。
まったく予想外の反撃を食らったためか、ギランは受身もままならなかったようだ。背中を強打したことで呼吸困難に陥り、仰向けに倒れたまま四肢を硬直させている。
ヴァートは素早くギランに詰め寄ると、盾を持つ左手を片足で押さえ、頚部の急所に剣を突きつけた。
文句なしの一本である。
審判の手が上がったが、歓声は少ない。ヴァートがいかにしてギランを弾き飛ばしたのか、理解が追いついていない観客がほとんどだからである。
「まさか、ぶっつけ本番で
皆と合流したヴァートに、マーシャは言った。
「済みません……あの盾の攻撃を破る方法は、あれしか思い浮かばなかったんです」
ギランにあえて盾撃を繰り出させ、真正面から打ち破る。それが、ヴァートの狙いであった。
敵が何かを狙っているのなら、その狙いごと食い破ってみせよ――これは、ヴァートの師・ハミルトンの教えである。
ハミルトンの言わんとするところは、相手がどんな奥の手を持っていようとも、それを受け切って勝つくらいの力を身につけよ、ということであろう。しかしこの教えには、武術家として生きていくうえで、重要な示唆が含まれている。
相手の得意とする戦法を破るということは、相手に自分への苦手意識を与えることに繋がる。長い武術家人生、この先同じ相手と何度合間見えるともわからない。一度苦手意識を植え付けておけば、再戦の際に有利に試合を運ぶことができるだろう。
ヴァートが盾撃を破ることにこだわったのは、この教えに従おうとしたからである。
「今回は成功したからよいものの、本番で付け焼刃の技術に頼るのは感心せぬな――」
なおも苦言を呈そうとするマーシャであったが、ヴァートの背後から歩み寄る人物を認めると、説教を中断してその人物に一礼した。
「お久しぶりにございます、オルコット老師」
杖にすがるように立っている七十過ぎの老人である。老人は、真っ白なひげを撫でつつ、温和な笑みを浮かべ返礼した。そのすっかり曲がってしまっている腰をしゃんと伸ばしたならば、かなりの長身となることだろう。身なりも物腰も上品な老人で、孫といってもおかしくない年齢のマーシャに対しても折り目正しい態度を崩さぬ。
「いやはや、お会いするのは三年ぶりですかな。ローウェル殿はご壮健かな?」
「ええ。今でも二日に一度は木剣を取って道場に出ているそうですよ」
「それは羨ましい限り。私などは、すっかりこの通りで。道場は師範代に任せきりですわい」
と、オルコットなる老人は自らの腰をさすってみせる。
そこでマーシャは、老人を皆に紹介する。
「こちらは、ニコラス・オルコット殿だ。皆、そのご高名は耳にしたことがあるのではないか?」
ミネルヴァ、アイ、ヴァートは一様に頷いた。
ヴァートはマイカから、アイは師ケヴィンから、ミネルヴァは父ギルバートから、それぞれ何度も聞かされた名前だ。
当年七十一になるというオルコットは、マイカやギルバートのひとつ上の世代の武術家である。盾の名手として知られ、「二つ名」授与者の候補に挙がったこともあるとか。
マイカはこのオルコットを苦手としていたらしく、「二つ名」を持つ大剣豪マイカが生涯唯一負け越した相手である。さらに言えば、オルコットは生涯すべての対戦相手に勝ち越している。連勝記録や三大賜杯の優勝など、派手な実績こそないものの、すべての相手に勝ち越しというのはきわめて珍しい記録だ。シーラント武術史においても、この記録を持つ者は少ない。
マイカも、オルコットに負け越していなければ、同様の記録を打ち立てていたはずなのだが――ヴァートは、マイカがオルコットの話をするとき、いつも苦々しげな表情を浮かべていたのを思い出す。負けず嫌いなマイカであるから、オルコットに勝ち越せなかったことがいまだに心残りなのだ。
「時に老師、ここにいらっしゃるということは、もしや――」
「はい。先ほどそちらのフェイロン君に負かされたギラン、あれは私の弟子なのですよ」
「なるほど、道理で手強いはずです」
マーシャも納得の表情である。
「久々に見込みのある弟子に恵まれたと思っておりましたが、いや、フェイロン君のほうが一枚上手でしたな。して――やはり、フェイロン君はグレンヴィル殿のお弟子なのですか?」
「いえ、私はほんの手ほどきをしたのみ。彼を鍛え上げたのは、兄弟子のラルフ・ハミルトンにございます」
マーシャの言葉に、オルコットは驚きの表情を浮かべる。
「ほう、あのハミルトン殿の……ラルフ・ハミルトンとマーシャ・グレンヴィル、二人の教えを受けたというのなら、その若さでその腕前というのも納得がいくというものです」
「いえ、ヴァートなどまだまだ未熟にございます。一歩間違っていれば、ギラン殿に軍配が上がっていたことでしょう」
照れ笑いを浮かべるヴァートを諌めるかのように、マーシャがぴしゃりと言い放つ。
「これは手厳しい。しかし――同世代にこれほどのつわものがいるとわかれば、ギランめも一層修行に精を出すことでしょう。感謝しますよ、フェイロン君。では、私はこれにて……」
ヴァートの肩をぽんと叩き、オルコットはその場を去ろうとする。が、三歩ほど歩いたところでその足が止まった。
「いけない、肝心なことを聞きそびれてしまいました。先ほどのギランの盾撃に対する返し技――あれはもしや、オネガ流の技ではありませんか?」
「はい、その通りです」
ヴァートが首肯する。
ギランを返り討ちにしたのは、アイに教わった「
簡単に言えば、肩の背中に近い部分を使った体当たりのようなものである。無論、単なる体当たりではなく、その動きにはさまざまな工夫がなされている。対象と接触する瞬間、両足の関節を固定するのがこの技の肝のなる部分のひとつだ。
自身に向かってくる敵に対しての反撃技として使う場合、上手くやれば攻撃の力をそっくりそのまま敵に返すことができるという。つまり、ギランは自身の盾撃の力によって吹き飛ばされたということだ。逆に、下手を打つとただ敵の攻撃をまともに受けるだけの結果となってしまう。ヴァートにとっては危険な賭けであったが、ギランの盾撃を破るのはそれほど困難だったのだろう。
敵に懐を取られそうになったときや、思わぬ拍子に敵と接近しすぎたときなど――ごく近い間合いにおいて、体当たりというのは非常に有効である。なにしろ、受ける側からすれば、わかっていてもこれを防ぐ有効な手立てがないのである。
しかし、体当たりを「技」として練り上げている流派はごく少ない。オネガ流は、その希少な流派のひとつなのだ。
ヴァートはアイとの稽古中に「肩当身」を食らって以来、この技の習得に励んできた。しかし、稽古中でもその成功率は五割を下回る。試合で成功させられたのは幸運だったのかもしれぬ。
「よく、オネガ流とおわかりになりましたね」
マーシャが尋ねる。
「実は、私も似たような技で痛い目を見たことがあるのですよ。ケヴィン・ウェンライト殿との試合でね。しかし、オネガ流の使い手は絶えて久しいと聞いておりますが――いったい誰からその技を?」
マーシャはアイを指し示し、
「彼女はアイニッキ・ウェンライト。ウェンライト殿が大陸で見い出した唯一人の弟子で、ウェンライト殿の養女でもあります」
と紹介する。
「お初にお目にかかりまする、某アイニッキ・ウェンライトと申します――僭越ながら説明させていただくと、先ほどのヴァートが使ったのは、オネガ流『肩当身』に、大陸はラダの国に伝わる古流武術の秘伝を取り入れ、改良したものにござる」
「これは驚いた……いや、ウェンライト殿に後継者がおありだったとは。なんとも、思いがけず嬉しいお話を聞くことができました。長生きはするものですなぁ。わが弟子にもフェイロン君という超えるべき目標ができたことですし、いやはや、今日は実によき日だ」
オルコットは、皺だらけの顔をほころばせる。
「では、今度こそ失礼します。フェイロン君、次の試合も期待していますよ」
杖を突き突き、オルコットは去っていった。
「ヴァート、オルコット殿はああ仰っていたが――いや、いいだろう」
ゆめゆめ慢心することなかれ――いま一度ヴァートに釘を指そうとするマーシャであったが、途中で言葉を切った。
ヴァートの瞳には、既に次の試合への闘志が宿っていた。その表情からは、慢心などかけらも感じられぬ。
(これならば、余計な小言など必要ないだろう)
他者に褒められたとき、その言葉に満足してしまう人間と、それを糧としさらに上を目指そうとする人間――人は、おおむね二種類に分けられる。ヴァートが、その後者であることは言うまでもない。
そもそも、マーシャに拾われてからというもの、ハミルトン道場においても、桜蓮荘においても、自分よりはるかに腕の立つ人間に囲まれて暮らしてきたヴァートである。そんな環境で慢心するような人物は、よほどに厚い面の皮の持ち主といえるだろう。
夕闇迫る中行われた三回戦。
ヴァートの対戦相手は、それまで戦ったガスコイン、ギランと比べればはるかに組し易い相手であった。
トーナメントの組み合わせによっては、こういうことも起こりうるというのは前述の通りである。
特に苦戦することもなく一本を奪ったヴァートは、大会一日目を無事に勝ち抜くことができたのであった。
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