女王の化粧師

作者 千花鶏

ファンタジー且つ確かな面白さの人間ドラマにして大河ドラマ

  • ★★★ Excellent!!!

 物語は主人公が化粧の腕を買われ、貴族の青年に請われて花街を出て、女王候補の少女に仕えるところから始まります。
 最初の舞台は没落から逃れようと足掻く貴族の館、一国内の話です。その中での人間関係や女王選出戦で出会う人々との関わりを通して主人公たちは成長していきます。その結果、主人公たちが得たもの、そして主人公の手からすり抜けて行ってしまったものは……は、本編を読んでお確かめいただくとして。
 けれど、序幕の最後、主人公たちが勝ち得たものの背後には、大陸全土に吹き荒れる動乱の嵐がすぐそこまで迫っています。ここからが本当の始まりです。一幕から舞台は多くの国々を巻き込んだ大きなものへと移っていきます。それとともに、魅力的な登場人物たちも当然ながら増えていきます。

 読み始めたが最後引き込まれ、泣き、笑い、怒り、迷い……気付けば登場人物たちとともに激動の時代に翻弄される楽しさ。その合間に挟まれる、世界の美しさ、登場人物たちに感じ始める愛おしさ。
 単純な成り上がり物語ではありません。主人公を始めとする登場人物たちは皆、人間的な弱さから間違ったり、迷ったり、互いの育ってきた環境から来る齟齬や曲げられない信念のぶつかり合いと自身の感情の間で苦しんだりもします。その過程で傷ついたり命を落としたりする者も出てきます。
 そういった、美しいだけでも甘いだけでもないシビアな物語ではありますが、恋愛的なときめくシーンも、一癖も二癖もある人物たちによる自国の生き残りを背に負った政治的駆け引きシーンも、緊迫感迫力とも素晴らしく手に汗握る戦闘シーンも、是非全編通してお読みいただき、たっぷりと浸っていただきたい作品です。

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その他のおすすめレビュー

★★★ Excellent!!!

ハマりました。本を読むように、(あとどれくらいかな…もっと読みたいな…)と思いながら読みました。まだおしまいになっていませんが、星をつけさせていただきます。なんで星みっつしかつけられないんでしょうね… 続きを読む

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