第34話お兄ちゃんの文化祭じゃない
また電話がかかってきたのは午後二時を過ぎた頃だった。
いや、メールだ。
妹からメールが来た。
果たして、その文面は。
『なんかうちのクラスに幽霊が出るって評判で、怖いんだけど』
おおかた予想通りの内容だった。
『お前らの作ったお化け屋敷の出来がいいんだろうよ』
と、言うようなことを打ち込み、送っておいた。
しかしながらメールを打つのは妹の方がはるかに速いらしく、俺が携帯をいったんポケットにしまおうとする直前に、また振動し。
『イヤ、マジ怖いんだけど、一回、教室内チェックいい?時間とって』
と返ってくる。
絵文字がないし、真面目な雰囲気のメールになってる。
まあ普段から、兄を相手に絵文字は使わんけどな。
「もしもおし、お兄ちゃん」
「なんだ、どうした。幽霊が出ると評判になったお化け屋敷で、良かったじゃあないか」
「いや、想定していないものなんだけど」
「想定していない?」
「どうも、話の
「ふうむ。調べてみるか………」
「え?」
「俺が捜索してやるよ」
「いや、もういい」
「なんで」
「………なんか、もういい、お兄ちゃん、
………。
難しい奴だ。
兄を見られるのが、クラスの生徒に見られるのが恥ずかしいって気持ちがわからないでもないが。
じゃあどうすればいいんだよ。
「まあ噂を流した張本人はうちらがやっておくけれど、探すけど、お兄ちゃんは自由にしてて」
「ふうん―――、ああ、そういえばだが、コーヒーカップか」
「あ、行ったの、二年六組?」
「ああ、あれは凄いな。気合入ってる。この俺が引くくらい」
「あれに負けないようにはしたいよね………お兄ちゃんの時には、あった?」
「俺の
「………何それ、いきなり、オセロって?」
「俺の文化祭の思い出だよ、高校の時の、それより比べるとお前の文化祭はいいよなあ、あらん噂が立って」
「………まあいいけど、一人で?オセロって」
「一人ではないよ。一人でオセロできるわけねーだろ、なんか、何人かでだべってた気がするよ」
高校時代の俺は人づきあいに自信がなかったが、それでも人と人は絡むものらしく、将棋やオセロで気の合う奴らとバトルしていた。
誰も口頭で宣言はしなかったが、出し物や出店に金銭を浪費することに、いったん飽きた連中だろう。
「お兄ちゃんオセロ強いもんね」
「強くねえよ、流石に
そうだ、何かをはさんでいた!
「え?」
立ち上がるような調子の声を上げた俺に、妹は困惑。
「だからさ―――挟んでいたんだよ、サンドイッチ的に………そうそう、パンで挟んでいたきがする」
そしてうまく挟めなかった気がする。
トマトとか、栄養価としては優れていたモノを苦労して作っていた気がするが、やはり素人が頑張っている感が満載のクオリティだった覚えはある。
ほっこりする。
「オセロはそりゃあ挟むでしょ」
「だから―――屋台。何かをパンで挟むスタイルの何かだった」
「え、何お兄ちゃん。オセロの話から連想して思い出したの?」
「え―――ああ、うん。とにかくサンドイッチ的な
「気はするが?」
「思い出せないんだよ………今日も出店でいろいろ見ていたが、記憶は戻らない」
「何それ怖い」
「まあとにかく進展があったら連絡くれ。やれることもあるかもしれないし」
「いや、キホン、これお兄ちゃんの文化祭じゃないから、私らの問題は私らで解決するよ」
「おお、それはご苦労なことだ」
いっちょ前に。
まあいいことなのだろう。
「じゃあね」
会話、通話が終わる。
ふうむ。
意外と
俺は食べ終わったお好み焼きの紙皿を捨てる場所を探して、少しうろつく。
ざわめきに耳を傾ける、聞きたい情報を得るため、耳を澄ます。
若人を中心とした雑踏の中で、ついにそれを聞きつける。
チャラい若者が何人か、近くを通り過ぎた全身を震えさせながら、小走りで過ぎ去った。
「いた!いたんだって!見てねえけど絶対あれ、仕掛けじゃねえってば」
「だろ!だろぉー!」
「ちょ、マジヤバイって、ガチだって、もう行こ!」
それを眺める俺。
ふうむ、びっくりして帰っていく層もいるのか。
何か手は打てない物か………などと考える。
面白ければ面白いほどいい。
祭りというものは。
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