仕損じる
細々と、押し入れの中から声がした。
すわ不審者かとぎょっとそちらを見たが、声は弱く歌うように続くばかりで、それ以上の事は少しも起きない。
じっと体を固くして身構えるうち、怖さよりも不思議の心が強まってきた。
そろそろと足音を忍ばせて押し入れに寄る。
びくりと屈めた背を起こしたその鼻先を、襖を破って飛び出た腕が掠めた。丸太のように太い腕だった。比例して大きな手のひらが私の頭があった空間を幾度か握り締め、やがて無念げに押し入れに引き返していく。
未だ喚き続けるベルをバックに、ひとつ、露骨な舌打ちが聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます