封書

 友人と二人で書店を冷やかしていたら、奇妙な背表紙を見つけた。

 タイトルも何も記されていない、まったくの空欄の背表紙である。それだけなら風変わりな装丁だと思うばかりなのだけれど、気を引かれた友人が手に取っても、どこにも書名や著者名の印字がない。それどころかバーコードすらもない。

 友人はぱらぱらと中を見た後、


「落丁かなんかなのかな。ちょっとレジに届けてくるね」


 そう言ってその場を離れ、それきり帰って来なかった。

 全くの行方知れずになってしまった。



 以来その背表紙は、ちょくちょく私の前に姿を見せる。

 自室の本棚に、図書館の書架に、書店の新刊のコーナーに。

 さりげない素振りで佇んで、私が手を伸ばすのを待ち構えている。

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