人づてならで
その日は父の三回忌だった。
霜月の終わりに倒れ、そのまま鬼籍に入った父を、母は「きっと年末年始の忙しいのと重ならないように配慮したつもりなんでしょ」と評した。
「まったく、用意がいいんだか悪いんだか」
言いながら拭った目尻に涙が溜まっているのを、私は見ないふりをした。
そんな次第であったから、法要は師走の頭に営まれた。
万事
するとその夜、夢枕に父が立った。
少し照れたように微笑みながら、しきりに部屋の上の方を指差し、
「ころばせ、ころばせ」
と繰り返す。
目を覚ましてから、どうにも気になって次第を母に報告した。
すると母は父の部屋の鴨居に、崑崙八仙の面が飾ってあると言う。二人で脚立を持ち出して調べたところ、その裏に隠されていたものがあった。
孫たち
「まったく、用意がいいんだか悪いんだか」
呆れたように呟いて、母は手紙を胸にかき抱いた。
そこに、何が記してあったのか私は知らない。
ただその在り処を直接母に告げられない辺りが、どうにも父らしい事だと思った。
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