探し物の格好
「
飲み屋の席で、そう後輩は言っていた。
彼が越した先の部屋に怪しげなものが出るのだと、そういう話だった。
「部屋の真ん中ら辺に、ちょうどこう、落としたコンタクトを探すみたいな格好で。じっと蹲ってるんです」
そんなものいるわけがないだろうと切り捨てる私に憤ったのか、酔いに任せて椅子を立ち、その姿勢の実演までをして見せた。
「まあ居る以外の害はないし、別に怖くもないんでいいんですけどもさ」
その話はそこで打ち切られてまたとりとめのない雑談に戻り、そしてそれが私と彼との最後の会話になった。
無断欠勤が数日続き、直属の上司が安否を確かめに行ったところ、部屋で死んでいる彼が見つかった。
死因は急性の心不全で事件性はないものとして落着したが、なんとも不可解な死に様であったと聞いている。
部屋の中央に、落としたコンタクトでも探すような格好で蹲って。
顔には何とも言えない恐怖の相を貼り付けて。
彼は、そのまま冷たくなっていたのだという。
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