走らせる
小学校からの帰り、駅までの道を聞かれて人を案内した。
迷子の女性は綺麗で優しげで、子供心にも役に立てるのが誇らしかった。
車が多くてうるさい大通りに出たところで、
「ここまでくればもう大丈夫。ありがとう」
彼女は繋いでいた手を離し、代わりに五百円玉を握らせくれた。
「少ないけど、これはお駄賃。好きなお菓子でも買ってね」
そう言って道向こうの店を指差し、ぽんと軽く背中を叩いた。
即物的な喜びもあったけれど、何より親切のお礼をもらえたのが嬉しくて駆け出しかけ、そこでいつも言われている「車に気をつけなさい」の言葉が過ぎって足を止める。
その鼻先を、ごおっとトラックが走り抜けた。
ぎょっと立ち竦む耳に、女の人の鋭い舌打ちが聞こえた。
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