魔法の椅子

「ちょっとちょっと、あんたのお店、ドロボウに入られたって聞いたんだけど! 大丈夫だったの!?」

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。盗られたのは椅子一脚だけだったから」

「あ、それならまだよかった……って、その椅子ってひょっとして、こないだ言ってた魔法の椅子? 座ると恋人ができるとかっていう」

「うん、そうなんだけど。ちょっとだけ違うかな」

「違うって何が? あ、まさか座ったら願いが叶うけど、代わりに悪い事が起こるホラーちっくなのだったとか!?」

「そうじゃなくて。効果は多分本物なんだけど、あれね、『恋人ができる椅子』じゃないんだよ」

「? ならなんなの?」

「彼氏のできる椅子」

「え」

「彼氏のできる椅子、だよ。あんな重い椅子持ってくなんて力持ちだろうし、そしたら多分盗んだのは男の人だろうと思うし。間違って座っちゃったりしてないか、ちょっとだけ心配だよね」

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