言葉をなくす
姉が喋れなくなった。
正確にいうなら、日本語を話せなくなった。
口を開けても出てくるのは異国の鳥の
筆談はできるので意思の疎通は可能だったが、それでも日常生活に差し支える弊害だ。病院にも行ったが原因はさっぱり分からず、家族一同頭を抱えた。
ただ姉の喉が奏でる歌はとても美しくて、私はそれを密かに録って、繰り返し聴いたりもした。
数日して、やはり突然姉に言葉が戻った。
原因は不可解のままだったが、姉はとても喜んだ。
本人にはとってはとんでもないストレスだったのだろう。「よかった、よかった」と繰り返しながらぼろぼろと泣いた。
私も嬉しくなって、
「お姉ちゃん、おめでとう」
そう言った。
言ったはずだった。
けれど私の喉から出たのは、異国の鳥の囀りだった。
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