撫でられる
大学の演劇サークルでスキーに行った。
安いツアーだった所為か、宿泊先は大層に貧相だった。手洗いに至っては汲み取り式で、電気も暗い。日が落ちれば目鼻の先までしか見えないような有様だ。
これは失敗したなあと思いながらも一泊目の夜、男女同室で飲んでいた。
すると手洗いに立った後輩の女子が、真っ青な顔で戻ってきた。用を足していたら、下から尻を撫でられたのだという。
聞くなり男性陣は大笑いした。
流石に変質者が這入る隙間もないだろうし、今時そんな怪談話はウケもしない。自意識過剰だなんだのと嘲って聞くに耐えなかったので、私はそこで中座した。
そのまま手洗いに行き、自分一人なのを確認してから、男声を作ってこう言った。
「女子用は隣だ、この変態」
特に反応はなかった。我ながら間抜けな真似をしたものだと部屋に戻った。
その後、手洗いに立った男子どもの幾人かが、青い顔で戻ってきた。
おそらく、私の所為ではないだろう。
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