おかえり
実家が大家族であったから、家が無人だった
お陰で一人暮らしを始めた今もただいまを言う癖が抜けない。玄関で靴を脱ぎながら、うっかり口にしている自分に気づく。
悪い癖ではないだろう。
でも誰に聞かれるわけではないけれど、聞かれて困るわけでもないけれど、なんとなく失敗をしたようで気恥ずかしい。
飲み会で遅くなった今日もその例に漏れずだった。
終電を降りて酔歩しながら玄関を開け、つい「ただいまー」と大きく言ってしまった。
すると、
「おかえり」
部屋の奥の暗闇から、そう応える声がした。
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