蓋の裏

 風邪の引き始めの気配がしたので、栄養を取ろうと果物の缶詰を買った。

 未だに、病気といえば桃缶という固定観念からは抜け出せない。元から桃は好物なので、抜け出すつもりもないのだけれど。


 家に帰ってそれを食して、風邪薬を飲んで一息ついて、さてまだ気力があるうちに後片付けをしておこうと台所に行った。

 空になった缶をざっと洗って、そこで気がついた。

 そのふたの裏に太めのマジックで、「ハズレ」と大書きされている。

 見るからに子供の筆跡だった。

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