託される

 闘病中の従姉妹から、封筒の束を預かった。

 数はきっちり十通。


「私が死んだら命日のたび、上から順でそれを出して欲しいの」


 言って従姉妹は笑った。ドライフラワーのような可憐さだった。きっと、自分の死をはっきりと予感していたのだろう。



 従姉妹が逝去したその翌年から、頼まれた通り投函とうかんを始めた。

 宛名は全て同じだったが、宛先は年ごとに違っていた。その人は日本各地を転々としているようだった。不思議にも記された住所が、従姉妹が亡くなった後、新しくできた市区である事もあった。


 今年が丁度十年目になる。

 だから今朝、最後の一通をポストに入れた。

 肩の荷が下りた気持ちなるのと一緒に、これで従姉妹とのつながりもなくなってしまったのだと、少し寂しい気持ちになった。

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