燃え尽きる
自販機で缶ジュースを買って、公園で一休みしていた。
すると数名の集団が目に止まった。地元のお母さんグループなのだろう。いずれも小さな子供を連れて、立ち話に興じている。
そのうちの一人のベビーカーが、私の方を向いていた。
乗った子供は一心にこちらを見ている。ただし凝視の対象は私ではない。私と子供の中間にいる猫だ。日だまりで玉のようにまあるくなって、昼寝を決め込んでいる。
のどかな情景だと笑みかけたその瞬間、じゅっと音を立てて猫が燃えた。
炎はほんの一瞬だけだった。けれど一瞬で十分過ぎる火力だった。
猫は鳴き声を上げる事すらできず、黒く消し炭になっている。かさかさのそれを誰ひとりとて猫だとも、猫の残骸だとも思うまい。
はっと視線を戻すと、ベビーカーの子供はきゃっきゃとご機嫌に笑っていた。
逃げるように、私は公園を出た。
猫の事はあの子供の仕業だと、何故か確信していた。無邪気めいたその笑顔が頭から離れない。
あの子は、一体どんな大人になるのだろう。それを思ったら、ひどく嫌な気分になった。
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