位置が悪い

 父が死んでから、家鳴りがするようになった。

 時折鳴るどころではない。家中で四六時中、がたがたぴしぴしと音がする。やかましくてたまらない。

 母と二人困り果てていると、海外にいて父の葬儀に間に合わなかった叔父が、仏壇に手を合せにやって来た。

 そして家に入るなり顔をしかめた。


「ああ、いかん。これは位置が悪い」


 力仕事だしほこりが立つからと、私と母は外に出された。

 何がなんだか分からないまま戸口に立ち尽くしていると、ほんの数十秒で叔父は再び顔を出し、「済んだぞ」と告げた。本人の言葉通り、埃まみれになっていた。

 

 以降、家鳴りはぴたりと治まった。

 叔父が何の位置を直したのかは、未だに分からないままだ。

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