供物
先月退社した笠松さん、覚えてるか?
俺、あの人にはかなりお世話になっててさ。辞める前にもちょっと話してたんだよ。
そしたらその時、こんな事を言ってた。
「うちの会社のエレベーターは朝、一基だけ、必ず地階に止まってるんだよ」
なんでそうなってるかのは笠松さんも知らなかったし、俺も知らない。
地下にあるのは倉庫だけだし、真夜中そんなとこへ用事のあるヤツなんぞに心当たりもない。
ただ、さ。あそこ、何か臭わないか。
一番に近いのは生ゴミだ。死んだ何かが腐ってく臭いだ。
話が
笠松さん、こうも言ってたよ。「今のご時世でうちの会社の業績はおかしい」ってね。
確かにその通りだよな。うちの伸びっぷりは神がかってる。まるで悪魔と取引でもしてるみたいだ。
それから最後に、「私みたいになる前に、君はここを辞めなさい」って忠告もされたよ。
従わなかったのは俺がまだここに居るんだから一目瞭然だけど、今にしてみれば従っておけばよかったと思うよ。
笠松さんには、なんか予感みたいなものがあったんだろう。
さっきから辞めた辞めたって言ってるけどさ、あの人、本当は
お前は俺みたいになる前に、ここ、辞めちまえよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます