風鈴の音

 就寝前に、実家に連絡をした。

 帰省についての打ち合わせ自体は数分で済んだのだが、母が電話を切りたがらない。別に嫌ではなかったので、そのまましばらく雑談に花を咲かせた。

 話していると母の声の後ろ側で、涼やかな風鈴が繰り返し鳴る。


「さっきから涼しげだね」

「何が?」

「風鈴。後ろで鳴ってるでしょ」

「何言ってるの。そんなの下げてないわよ。そっちの部屋の外ののじゃないの?」


 母の言葉に、曖昧あいまいに返して通話を終えた。

 それから窓を確かめる。

 エアコンを稼動させているから、それはしっかりと締め切られている。外の音は少しも漏れ聞こえない。

 母は実家のものではないと言った。ならばまだ耳に残って響く、あの澄んだ音色はなんだったのだろう。

 得心はいかないが、考えても解が出るものではない。なら思い悩むだけ意味のない事だ。

 思考放棄して布団に転がり、目を閉じる。


 眠りに落ち込む手前の耳に、風鈴のはまた響いた。

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