合う靴がない
こないださ、居酒屋で飲んでたんだよ。そうそう、駅前のあの店。
んでラストオーダー過ぎてそろそろ出るかってんで、俺、手洗いに行ったのな。
個室に入ってちょっとしたら、後から誰か手洗いに来たんだけど、そいつの足音がおかしいんだよ。ぺた、ぺた、って、明らかに素足の音なのな。
おいおい手洗いで裸足かよ、どんな酔っ払いだよと思ってさ。
あそこのトイレ、個室のドアの下の隙間が結構空いてるだろ? そこからちょろっと覗いたわけだ。
そしたら予想通り素足が見えた。
ただ形が変だった。
足首、踝、踵と、ここまでは普通なんだが、なんつーの? 足の甲から先? それが手みたいなんだよな。指とか露骨に長ぇの。
で、ものすげぇ汚い。泥が乾いたみたいなのがこびりついてて、こいつどこでも裸足でうろついてるんだろうなって感じ。
いや、酔っ払ってたから特に怖いとも思わなかった。それがよかったのかもな。
見てるうちにそいつ、くるっと方向転換してまたぺた、ぺた、って出てってさ。だから俺も無事、手洗いから出れたってわけだ。
まあ気がついたのはその後でだよ。何にって、そいつが裸足で居る理由。
あの足じゃそりゃ、合う靴なんてありゃしないよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます