打ち寄せる

 I県での話だ。

 台風が過ぎた後、浜辺に死体が打ち上げられた。

 丸裸で、身元を示すようなものは何も見当たらない。体には大きな傷もなく、死因は溺死であろうと察せられた。

 船の残骸めいたものも同時に打ち寄せられたが、いずれもであり、調べの役には立たなかった。

 だが何よりも人々の口を騒がせたのはその大きさで、死体の身の丈は、なんと十数メートルもあったそうだ。


 私はその噂を耳にしてはるばる見物に来たのだが、しかし目の当たりする事は叶わなかった。

 どう処理をするべきかと手をこまねいているうちに死体は腐り出し、ひどい臭いを発し始めたので解体して荼毘だびに付したのだという。

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