笑顔
暑さに負けて、喫茶店でひと涼みする事にした。
アイスコーヒーを
「本当に変な夢ですね」
「変っていうより嫌な夢よね、悪夢よ悪夢。友達もすっかり怖がっちゃって」
後者の声は、漏れると表現するのがおかしいくらいに大きい。他の迷惑を顧みない輩もいるものだ。思いながらもなんとない好奇心で耳を澄ましてしまう。
「毎晩そんな夢みたら、誰だって怖くもなりますよ」
「でしょう? だからあたしがもらってきてあげたの」
「え?」
「友達もね、夢の話を別の人から聞かされて、その後から同じ夢見るようになったんですって。きっと人に話せば夢が移るのよ。だから今日、あたしが話聞いてもらってきてあげたの」
「え、じゃあ先輩が私を呼び出したのって」
「そうよ。この話がしたかったの。午前中のうちに友達から貰って、それから急いでこっちに来たのよ。慌ただしかったけど助かったわ。友達も喜んでたわ。何でもお礼言われちゃったもの」
「でも、それって私が……」
「大丈夫よ、大丈夫。なんの為にあたしが大声で話てたと思ってるの? きっとあなたじゃなくて、盗み聞きしてた誰かが持ってくわよ」
あまりの言い草に、思わず振り向いてそちらを見た。
すると得意満面の笑顔が目に入った。
忘れられなくなりそうな、実に嫌な笑顔だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます