おはようございます

 アパートの管理人さんが亡くなった。

 気のいいおじいさんで、朝はよく掃除をしながら「おはようございます」と出かける住人達に声をかけていた。

 近所の子供達からも慕われていて、葬儀の席でもその死はひどく惜しまれた。


 それから数日。

 出がけに管理人さんの挨拶を聞いたという人が続出していた。

 出かけようとする背中に、いつものように、今まで通りに、「おはようございます」と声がかかる。

 かけられた方も習慣で、やはり「おはようございます」と返す。返してから、もう亡くなった人の声だと気づくのだ。


 だがその挨拶も、ふた月ほどでやがて止んだ。

 今度こそ本当にいなくなってしまったのだと、住人一同改めて彼を偲んだ。

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