弔問

 祖父の訃報が届いた。

 うちの爺さんは木工で口を糊した人間で、小さい時分にはよく、あまりの木っ端で玩具を手作りしてもらったりもした。

 頑固職人と呼ばれるタイプの人間だったが、孫には甘かった。祖父に甘い孫の評になるが、きっと名工と呼ばれる類の人であったとも思う。

 忌引きの申請をして実家に戻りると、母がおかしな話をしてくれた。

 祖父が逝去した日、庭に忽然と木が現れたのだそうだ。

 木と言っても土に根付いた物ではない。プレカット済みのきちんと乾かされた、加工用の木材だ。それが一山、庭にあった。

 勿論、前日までそんなものはなかったという。

 倒れる直前まで彫り続けていた祖父の事だから、既に何か仕事のの約束があったのかもしれない。不在の折に運送が来て、それを置いていったものなのかもしれない。

 そんなふうに考えたのと、葬儀関わる多事とがあって、母はしばらくその存在を失念していた。

 数時間後、思い出して庭を見ると木材は全て消えていた。


「ひょっとしたら、お爺ちゃんに彫ってもらいたかったのかもね」


 母は、そんなふうに結んだ。

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