第四十九話『14万円』

「やった・・・」

私はやり遂げてそういった。

なかなかハードな戦いだった。

最強の「獄炎 - ファイヤーブレス」でも倒せない敵だったのだ。


「やったね。」

へびくんもうなずいている。

今回はへびくんの合図に合わせての作戦だった。

かれもほっとしたのだろう。


「うまくいったな。」

ライオンが言う。

そう、今回は珍しくライオンが頑張った。

なにげにサクッとやってくれたけど、ヘラクレスオオカブトのツノを折るのってかんたんじゃないと思うのよね。


「ライオン!やったわね。そしてめちゃくちゃテンション下がってるぅぅぅ!」

私はライオンとイエーイと手を合わせるぐらいの気持ちでライオンに言おうとそっちをみたら、ライオンのテンションは半端なく下がっていた。

もともとテンション高い人では無いけれど驚くほど下がっている。


「大事なヘラクレスオオカブトのツノを折ってしまった・・・」

ライオンはぐったりしながら言っていた。

そんなにテンション下がることなのか・・・それは・・・と私は思った。

かれはまだそのツノをじっと見ている。


「ああ、価値がおちちゃうもんね」

へびくんがライオンのテンションが下がる理由を説明してくれた。

あー、カブトムシって高いんだっけ?

男の子の趣味はよくわからないわ。


「ああ、14万円ぐらいするからな」

ライオンはさらっといった。

カブトムシってそんなに高価なのね・・・

14万円というとカフェ280回分ぐらい・・・


「ええええ、そんなにするの?」

私はびっくりする!

思っていた以上のとんでもない値段だった。

おそるべしヘラクレスオオカブト。


「折ってしまえば価値はなくなる」

ライオンは悲しげに言った。

ライオンはその価値のことがよくわかっていたのだった。



「oh...なんてこと」

私はことの重大さがわかっていなかった。

14万円。

高校生の私からしたら大金だ。今はヤギだけど・・・


「このヘラクレスオオカブトはもう戦意はないだろう。妖精!治しておいてくれるか」

ライオンはもはや舎弟となった妖精くんにお願いした。

妖精くんは静かに私達についてきていた。

そしてここのボスであろうヘラクレスオオカブトがを倒したことによってこっそり出てきていた。


「わかりました!」

妖精くんも舎弟感を隠すことなく素直に治してくれた。

ヘラクレスオオカブトはまばゆい光に包まれた。


「あ、なおった。」

わたしがいう。

ヘラクレスオオカブトはすっかり元気を取り戻した。

もう私達を攻撃してくるつもりはないようだった。


「そして飛んでいったね。」

へびくんがその姿を目で追いながら言った。


「達者に生きろよ」

ライオンは遠くなるヘラクレスオオカブトに向かってそういった。

美しい友情がそこには生まれていた・・・


「いいことしたわね」

私はつぶやいた。


「さぁ、カカオを取りに行くわよ!」

私は言った。

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