記憶  I




 晶生は、また堺の車で家まで送ってもらっていた。


 堺が言う。

「あんた、わかってないわよね」

と。


 沐生だったら、スタジオに居そうだと思ったからわかったと言ったあとのことだった。


 運転している堺を振り向くと、堺は前を見たまま言ってくる。


「あの男は死んでもあんたに張り付いてるわよ」


 私と一緒よ、と余計な一言を付け加えて。


「人の心がわからないから、何度でも起こる―― か。

 あんたのことみたいよね」

と言う堺に、


「なにいきなりぶちかましてるんですか」

と文句を言うと、


「わかってないでしょ、私のことも。

 沐生のことも」

と言ってくる。


「あんた、沐生はきっと、私以上に怖いわよ。

 あんたに関しては」


 だから、私も手をこまねいて見てるんじゃない、と言う堺に、

「……何処もこまねいてないじゃないですか」

と言った。


 車が家の近くに着く。


「毎度思うんですが、なんで家の前まで行かな……」


 言い終わる前に腕を掴まれ、キスされていた。


「今日はこれで許してあげるわ」

 そう離れた堺は言ってくる。


 許すってなんだ? と思っていると、

「晶生。

 あんたはいつか私のものになる運命なのよ。

 そう決まってるの」

と言う。


「ほら、さっさと行きなさいよ。

 見ててあげるから」


 降りろと堺は急かしてきた。


 はいはい、わかりましたよ、と降りて、

「ありがとうございました」

と一応、頭を下げると、ドアを閉める寸前、堺が言った。


「ねえ、あの男って、殺せるの?」


 え、と顔を上げると、妖艶に笑って言ってくる。


「遠藤――」






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