それが目当てじゃありません III

 


「やだーっ。

 飴細工が蝶ーっ」


 出てきたスイーツに堺が一番大喜びし、林田が、

「なんでそんな派手なの頼むんですか。

 やっぱり、シンプルなのが一番味がよくわかるんですよ」

と蘊蓄をたれながら、濃厚なチョコアイスを食べていた。


 なんなんだろうな……この人たち、と思いながら、晶生は、堺と同じパフェを食べていた。


 そもそも、スイーツ食べに来たんだったろうか、と思ったとき、堺が言った。


「最高。

 私、このパティシエと結婚したいわ」


 いやあの、これ作った人、男か女かわかりませんが。


 まあ、この人の場合、どっちでもいいのか、と思いながら、食べていると、

「やだ、なに、晶生。

 辛気臭い」

と言いながら、堺は晶生のパフェから飴細工のキラキラした蝶を取る。


「あっ、返してくださいっ」


 ライトの加減がいいのか、透き通った蝶が鱗粉を撒いて飛ぶかのように輝いて見える。


「えいっ」

と堺は晶生の髪にそれを引っ付ける真似をした。


「あら、可愛い」

と自分でやっておいて言う。


「晶生はやっぱり、こういう女の子ーって感じの飾りが似合うわよね。

 ……魂は男みたいなのね」

と余計な一言を付け加えてきた。


 凛が笑って、

「晶生と堺さんって。

 なんだか、私とより、よっぽど、女の子同士のトークっぽいですね」

と言う。


 それで油断すると、ひどい目に遭うのよ、凛……と思っていると、凛は感心したように堺をまじまじと眺めていた。


「見た目はほっそりした女の人にしか見えないのに」


「なに言ってるの。

 堺さん、意外と筋肉質なんだから。


 触らないとわからないけど」

と晶生は、ひょいと堺の腕を掴んで見せる。






 なにが触らないとわからないけど、だ。

 真田は渋い顔をして、晶生たちを見ていた。


 男だとわかってて、そんな簡単に触るってのは、頻繁に触ってるのか。

 触られてるのか。


 それとも、男として、まったく意識してないのか。


 みんながスイーツで盛り上がる中、一人、いろいろと考えながら、珈琲を飲んでいた。


 あのー、と林田が晶生たちに訊く。


「前から思ってたんですが。

 お二人はどういう関係なんですか」


「なんで?」

と堺が言う。


「いや、だって、言いたい放題だから」


 ああ、と言った堺が、少し考え、

「……恋人?」

と言った。


 思わず、珈琲を吹いてしまう。


 なにやってんの、という目で晶生が見て、お手拭きを投げてくれた。


「ああ、いや。

 元恋人?」

と堺は自分で言い換える。


「堺さん、私を退学にさせる気ですか」

と晶生が睨んだ。


 堺は、凛と林田に向かい、

「大丈夫。

 プラトニックだから」

と言ったあとで、すぐに、嘘よ、と笑う。


「……何処の部分が嘘なんですか?」

と凛が苦笑いしていた。




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