あまり立ち寄りたくないダムのほとり III

 


 しょうもない話をしていると、誰かがガサガサと斜面を上ってくる音がした。


「やっぱり、晶生ちゃん」

とこちらを見つけた林田が嫌そうな顔をする。


「……と秋村さん。

 なんで、こんなところに来てるの。


 叱られるよ、勝手に入ると」


 晶生が、

「林田さんが呼んだことにしてくださいよ」

と言うと、


「えーっ。

 僕にそんな権限ないよ」

としょぼいことを言ってくる。


「じゃあ、堀田さんが呼んだことにしてください」

と言った途端、横から、


「俺は呼んでねえぞ。

 警察も見つけてねえ証拠見つけて隠滅しそうな嬢ちゃんは」

という声がした。


 見ると、堀田が上の道を沐生と一緒に歩いてくるところだった。


 どうも、車を止めに行って出くわしたようだ。


 この組み合わせだと、沐生が連行されてるみたいだな、と思いながらも、向こうから現れてくれたんなら、ちょうどいいと、

「篠塚さんは此処で殺されて投げ込まれたんですかね?

 それとも、殺されて運ばれてきたんですかね?」

と訊いてみる。


 だが、堀田は考えるように、顎をしごいたあとで、

「どっちなんだい?」

と凛に訊いた。


「私じゃありませんっ」

と凛は言ったとき、晶生は、背後にひんやりとした気配を感じた。


 あれだ。

 あの気配。


 冷たい水の気配。


 ゆっくりと警戒するように振り返ってみたが、そこには誰も居なかった。


 場所が悪い。

 場所が悪いよ、此処。


 早く去りたい、と晶生は顔をしかめる。


 堀田がこちらを窺っているのを感じる。


 このオッサン、私を此処に来させるために、凛を殺人犯に仕立てたんじゃあるまいな、とついつい、深読みしてしまう。



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