あまり立ち寄りたくないダムのほとり II

 



 晶生たちは、沐生の車で、ダムのほとりまで来ていた。


「へえー、気持ちのいいところだな」

と車を降りた真田が言う。


 いや、あんただけだって、此処へ来て、呑気にフィトンチッドを感じられるのは、と晶生は思った。


「警察の車両がまだ結構居るな」

と道を見た沐生は言い、


「紛れ込ませて止めてこよう」

と言う。


 おいおい、警察車両にか。

 こんな車あるか、と思い眺める。


 ちょっとクラシックな形の小洒落た車だ。


 沐生が戻ってくるまで、三人でガードレールに腰を載せ、喋っていた。


「ところでなにしに此処へ来たんだ?」

と今更なことを真田が問う。


「凛に殺人容疑がかかってるから晴らしに」


 へ、へー、という真田が、少し、凛の側から身を引いた。


 凛は黒いローファーを履いた自分の足許を見、

「私じゃないわ」

と言う。


「私はやってない。

 此処でやるはずがない。


 だって、晶生。

 あんた、中学のとき、紅葉狩りで此処にバスで来て、

『昔、私、此処で人を殺して沈めたのよ』

 って言ったじゃない」


「沈めたら死んだのよっ」

「どっちでもいいわよっ」


 真田が、もう聞きたくない、という顔で、両耳を塞いでいた。


「当時はピュアだった私がどれだけ、嘘よって言葉を待ったことかっ。

 あんた、私がどんだけ胸を痛めたか知ってんのっ」


 自分はなんかその場の雰囲気で言いたいだけ言っちゃってっ!

と凛が文句を言ってくる。


 悪かった悪かった、と晶生は両手を挙げて、凛を制止しようとするが、

「心がこもってないわよ」

とまた、いちゃもんをつけてくる。


「だいたい、あんた、あの頃、さして親しくもなかった私に、なんであんなこと言ってきたのよ」


「いやあ、あんたはなんだか」


 そこで晶生は一度、言いかけた言葉を呑み込む。

 だが、今更引っ込めるわけにもいかないのを悟り、口に出した。


「……こっち寄りな人間の気がしたから」


「……だから、犯人じゃないわよ、私」

と凛が言う。


「そうね。

 あんたがやったのなら、きっと別の場所に捨ててくれたわよね」


 だが、そこで、真田が腕を組み、首を傾げて言う。


「でも、晶生の罪は発覚してないんだろ。

 じゃあ、私もーって、此処でやっちゃうこともあるんじゃないか?」


 思い切り、凛に睨まれていた。




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