かなりめんどくさいダムの殺人 IV




 車はいつもより学校近くに着いた。


 いいのか? と思いながら降りると、沐生が窓を開け、助手席に手をついて呼びかけてくる。


「晶生。

 夕方なら、少しはつきあえるぞ」


「え。

 ダムまで乗せてってくれるとか? お兄ちゃん」


 お兄ちゃん言うな、という顔をして、

「まあ、時間が合えばな」

 後で連絡しろ、と言ってくれる。


 そのまま走り去る彼を見送りながら、まあ……今朝、彼をお兄ちゃんと呼ぶのは、あんなことのあとだ。抵抗あるな、思っていると、

「誰? 今の。

 晶生のお兄さんなの?」

と後ろから声がする。


 友人たちが、おはよーと現れた。


「ああ、そう。

 大学行くついでに、乗せてきてくれたの」

と言うと、きゃーっ、と彼女たちは騒ぎ出す。


「格好いい。

 長谷川沐生に似てる」


 ……本人だよ。


「そうえば、沐生って、晶生と似てるもんね。

 お兄さんも晶生と似てるってことか」


 いや、全然似てないが。


「お兄さん、今度、紹介して」

と言われ、


「いいけど、彼女居るよ」

と言うと、あーっ、やっぱりー、と言っている。


「彼女が居てもいいなあ。

 弄ばれてみたいーっ」

と盛り上がりながら行ってしまった。


 いや、それが弄ぶとか器用なことが出来る人じゃないんだけど。


 芸能人というより、職人みたいな人だからな、と思っていると、横から凛が、

「彼女って、あんた、自分のことでしょ」

と言ってくる。


 ……そうなのか?

 私はそんな洒落たものなのか?


 ただの共犯者のような気がしてしょうがないのだが。


 犯罪的な意味でも。

 兄妹なのに、あんな風に夜を過ごしているという意味でも。


 だが、そういえば、今、耳敏い彼女らが、凛をスルーしていたな、と気づく。


 ということは、昨日、凛が警察に連れていかれたことは、学校では広まってはいないということだ。


 少しほっとしたが、凛の後ろにちょっと困った人が居た。


「なにが大学生のお兄ちゃんだ」

と真田が言う。


「いや、一個も嘘は言ってないけど」


 忙しくて、なかなか行けないから卒業できなさそうな大学生だ。


 兄なことも嘘ではない、と晶生は思った。


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