ちょっとめんどくさいダムの殺人  I

 


 なにを思ったか最近、沐生がよく家に帰ってきてくれるので、晶生は機嫌が良かった。


 その日の朝も、

「早く食べちゃいなさいよー」

という母の声に、はーい、と返事をしながら、鼻歌を歌い、沐生の横の椅子に座って、テレビを見ながらご飯を食べていた。


「晶生、ちょうどついでがあるから、乗せてってやろうか」

と沐生が言う。


「学校まで?」

と言うと、学校の近くまでだ、と言われる。


 まあ、そりゃそうか。

 人目についたら困るもんな。


 最近は、堺とは現場での待ち合わせが多いようなので、自分で行くことが多く、車を買ったようだった。


「運転中、いきなり、フロントガラスに男の霊がべったり張り付いてきたりするから運転したくない」

とよく言っていたのだが。


 とりあえず、晶生の祖父が祈祷したお守りを車に置いているようだが、失礼だが、そんなに効果があるとも思えない。


 そんな話をしていたとき、そのニュースが目に入った。


 男性の遺体発見のニュースだ。


 殺されたのは医大生だと言う。

 遺体が浮いていたのを魚釣りに来た少年が見つけたと四角い顔のレポーターが何処かの山道を進行方向を見ずに歩きながら言っていた。


 あれ、こけないのだろうかな、と思いながら見ていたとき、場面が切り替わった。


 おや? と思う。


 上空から映し出される何処かで見た山。


 何処かで見た……


 ダム。


 晶生は思わず立ち上がり叫んでいた。


「誰っ!

 こんなところに遺体を捨てたやつっ!」


「……お前が言うなよ」

という沐生の声が聞こえた。



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