居るよ…… II



 沐生が撮影に戻ったのを見て、汀が晶生の側に来た。

 ぼそりと呟く。


「なんか見たことがある気がするんだよな、此処」


「この通りですか?

 それともあのカフェ?

 それか、あの家?」

と霊の出てきた家を指して言うと、汀は目を細めて見ながら、

「……家かな」

と呟く。


 この霊の出る家を見たことがあるって? と思っていると、またあの家から同じようにして、女の霊が這い出して来ていた。


 そのまま眺めていると、その霊は沐生の足首をまた掴んだ。


 ん?

 あの霊、なにか言ってる気がするな、と汀と同じように目を細めて見ようとしたとき、いきなり視界を塞がれた。


「だーれだ」

「……このメンツだと、そんなことしそうなの、堺さんしか居ませんよね?」


 なんなんですか、と女のもののように白いが、意外とがっしりしていてる手を掴んで剥がさせると、堺が言う。


「余計なもの見て、騒ぎ起こさないでよ。

 静かに撮影を終えさせてね」


「そうですか。

 今、ドッキリで現れた幽霊と本物が一緒に沐生を民家に引きずり込もうとしてますが、別にいいですか」

と言うと、さすがに、うーん、という顔をしていた。


 すごく適当に作ってある長い髪のカツラを被った、白い着物姿の男が、沐生に負ぶさるようにして、のしかかり、そのまま、民家に引っ張って行こうとしている。


 そして、その足許では本物の女の霊がやはり、沐生をそこに引きずり込もうとしていた。


 なにがあったんだろうな、あの民家で……と思う。


 その女の霊はどうもまともな死に方をしていないように思えた。




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