呪われた男 IV

「犯人は、中岡さんを本当に呪っていて、中岡さん、或いは周りの人間に呪っている、と示したかったのか、特に呪ってはいないけど、呪われているように見せたかったのかってこと」


「もう一回言って、晶生」


「……めんどくさくなってきたから、もういい?」


 ちょっとなによ、あんた、友だち甲斐のないっ、と叫びながら、日向は、後ろから晶生の両肩に手を置き、のしかかる。


 あんた、おんぶお化けか、と日向を引きずったまま、晶生はトイレの中を覗き、言った。


「何故、ファラオの面を中岡さんは被っていたのか」


「犯人が被せたんだろう?」

 ざっくり状況を聞いていた真田が答える。


「そう。

 では、何故、被せたのか。

 石板を横に置いたのは、何故なのか」


「顔を隠す必要があったとか?」

と村が言う。


「その可能性もありますね。

 顔を……隠したい人間は居たと思うけど。


 それは犯人じゃないし、たぶん、今は関係ない」


 えっ、どういう意味? と林田が言う。


「晶生ちゃん、秘密はなしだよ。

 じゃないと、重要参考人として引っ張るよ」


 えっ? と晶生は振り返る。


「私、関係ないじゃないですかっ」


「わかんないよ。

 晶生ちゃん、僕らが来る前にマスク剥がしたね。

 そこに晶生ちゃんにとって、まずいものがあったのかもしれないじゃない」


「なんでですか。

 第一、私には中岡さんを襲う理由がありません」


 林田は少し考えて言う。


「水沢樹里に先に婚約されたから、悔しくて、とか?」


「林田さん、私、高校生です」

「自分がフラれた直後だったとか」


「……堺さん、私、今、この人、殺しても、罪に問われない気がするんだけど、どう思う?」


 えーと、と堺が苦笑いしていた。


「ともかく、私じゃないですよ。

 此処に来たときにはもう、中岡さん倒れてましたから」


「その前のアリバイは?」

 本気ですか、もう~っ、と言い、晶生は言う。


「堺さんに連れられて中に入って、エレベーターで、そうだ。

 笹井光一さんと一緒になりました。


 そこを出てから、樹里のマネージャーの後藤さんと出会って。

 樹里が来るまで、ジュースでも飲んでてって、ジュース代をもらって、自販機求めて彷徨ってました」


「もともと知り合いの堺さんに樹里さんのマネージャー。

 笹井さんは見えてないし、誰もちゃんと証言できる人、居ないじゃない」


「もう~っ。

 わかりましたよっ。


 中岡さんの顔を或る特定の人に見せたくなかったのは、樹里です」


「えっ、なんで」

「さあ、こんな風に狙われたら困るからですかねえっ」

と喧嘩越しに晶生は答える。


「それだったら、連れて来なきゃいいじゃねえか」

と余計なことを言う真田を睨んだ。


「さっきの取り乱しようから言って、樹里が犯人というのはないと思いますが」


「でも、樹里さん、女優さんでしょう?」

と言う林田に、

「あの女、そんなに芝居は上手くないぞ」


 あれが演技だったら、言うことないんだが、と沐生が溜息をつく。


「でも、今は樹里は関係ないです。

 マスクで顔を隠しても、どうせ、すぐに剥がされますから。


 やはり、マスクと石板をあそこに置くことに意味があったと私は考えます」


 そうだな、と沐生が割って入る。

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