神社  VI


 沐生は靴を履いて外に出た。

 電話の相手は堺だった。


 晶生と弓道場に居ると言うと、

『やだー。

 晶生ちゃんも弓引いてるの?

 見たい見たい』

と騒ぐ。


 あいつの場合、人しか狙って引かない気がするから、弓を持たせるのは危険なんだが、と思いながら、

「いや、晶生はやらない」

と言うと、


『なんだ、つまらない。

 じゃあ、行かないわ』

と言う。


 お前、どんだけ晶生のファンだ、と思った。


『そういえば、沐生も弓道やってたわね。

 今度の写真集に一枚入れない?


 ちゃんと片肌脱いでよ?』


 話が散々逸れたあとで、堺は、

『晶生ちゃんに伝えてよ。

 水沢樹里から伝言があるから、電話してって』

と言ってきた。


「晶生に用事なのか?」

と言うと、そうよ、と言う。


「じゃあ、今、伝えりゃいいだろ」


『いいから、私の番号教えておいてよ。

 じゃあね』

と言って、さっさと電話は切れた。


 仕事の話とこっちとどっちがほんとの用事だったんだ? と思いながら、弓道場に戻る。


 晶生は巫女姿のまま、隅に座って、真田が弓を引くのを見ていた。


 真田という男、ルックスはいいが、チャラ臭い男だと思っていたが、そうして、弓を手にしたときの顔は別人のように、いい顔だった。


 開いたままの戸に背を預け、なんとなく二人を眺める。



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