神社 V

 


 よく来たよく来たと晶生にまったく似ていないお祖父さんに真田は歓待された。


 弓道場は神社の裏手だった。

 木々に囲まれ、涼しげだ。


「晶生はやらないのか?」

と完全に見る体制の晶生に問う。


「私はやらないわ。

 だって、弓は人を殺す道具だから」


 だから手に持ちたくない、と晶生は言う。


 いや……元々はそうかもしれないが、戦国時代じゃないんだから、人殺しに使う人もそうそう居ないだろうと思っていると、これまた、完全に見学する体勢の沐生が、


「じゃあ、お前、包丁も持つなよ」

と難癖つけている。


「こりゃ、沐生。

 やらんのか」


 晶生の祖父にそう叱られても、沐生は道場の隅に座り込み。


「今日はやらない」

と言い放つ。


 晶生と祖父より、沐生と祖父の方が本当の孫のような感じで遠慮がなかった。


 なんだ、やらないのか、晶生は。

 似合うと思うのに、と思っていると、祖父が弓を引くのを見ながら、晶生はぼそりと言った。


「邪念でも射られるのならやってみたい気もするけどね」


 ……それだと、まず、俺が射られるな、と思った。


 緋袴を穿いた晶生を見、

「晶生は将来、巫女さんになるのか?」

と訊くと、そうねえ、と言った彼女は、


「どっちかって言うと、神職になりたいわ」

と言う。


「神主さん?

 なんでだ」


 祖父を見ていた沐生がこちらを振り返る。

 晶生は沐生たちの方を見ずに笑って言った。


「雨乞いしたいからよ」


 ……本当によくわからない女だ。


 そのとき、沐生の携帯が鳴り、沐生は爺さんに怒られていた。


 だが、仕事の電話だったのか、切らずに沐生は外に出る。


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