干渉者、集う4
「か……、“解、放”……」
「解放?」
「“能力の、解放”。眠っていた力を、引き出してもらった」
「そうなの? ジーク」
「俺もそう聞いてる。かなりの強い力が引き出されて、それで何か変化が出たんじゃないの?」
「そうかしら。でも、入院中も、退院直後も、おかしな臭いはしなかったと思うけど。それだけじゃないでしょ? 砂漠は? あなたたち二人は砂漠で出会ったの?」
俺とシバを交互に睨み付ける美桜。
シバは軽くうなずいてにこやかに答えた。
「そう。砂漠で倒れてた。私が見つけなかったら、どうなっていたか。そういえば、君の相棒の……彼は? 普段は一緒じゃないのか」
「相棒? 何それ。凌に相棒が居るの? 私、聞いてないわ」
嗚呼。話の流れが上手くいかなかったらしい。テラのことは言いたくなかったのに、あっという間にバレてしまう。
「居たよ。金色の竜だ。普段は人間の姿をしていたけど、かなり頭の切れる男だ。あれ? この話、み……じゃなかった、芳野さんは知らないの」
「“美桜”でいいわ。どうせ私のこと、みんなは陰で呼び捨ててるんでしょう。にしても、へぇ……、竜ね……。しかも、人間の姿に化けるなんて、普通じゃないわよね。そんなランクの高い竜とどこで契約を結んだの? いつの間にそういう展開になっていたのかしら」
やっぱり。
完全に怒ってる。
助けてくれとジークに向けて必死に目線を送る。気付いてはいるはずなのに、ジークは一向に助け船を出してくれない。
畜生。
どうにでもなってくれ。
「さば……砂漠。砂漠に、無理やり連れて行かれて」
「誰に」
「ディアナに」
「それで?」
「力が解放されても、使えないんじゃ意味がないからって。置いて……いかれた」
「砂漠に?」
「そう」
「それで帆船に助けてもらったと」
「そう」
「竜は? 竜は出てこないじゃない」
「砂漠で」
「砂漠に竜は居ないわ」
「ディアナに貰った」
「ディアナが? 竜を?」
「くれた」
「まさか」
「ホントに」
「証拠は?」
「え?」
「竜と契約したってことは、竜を呼び出せるってことよ。本当に凌が砂漠に行っていたと言うなら、砂漠で竜と契約したって言うなら、ここに連れてきて。そしたら今の話、信じてあげるわ。砂漠の時間は都市部とは違うってくらい私だって知ってるんだから。あそこなら短い時間に何かが起こったのだとしても不思議じゃないわ。砂漠で力を付けて、それで今の凌があるってことなんでしょ? 雰囲気が変わったのも、力が出せるようになったのも砂漠に行ってからだって言うなら、見せてよ。証拠を」
美桜はそう言って、あごを突き上げた。
眉間に寄せたシワが、怖い。
「証拠ってったって……」
俺の竜は、美桜の母親の竜。確かに、人間の姿になったときの見てくれは随分違う。だけど、小さい頃の記憶がまだあるなら、気が付いてしまうんじゃないのか。俺が過去に行って全てを見てしまったことを。
せめてそこの部分だけは内緒にしておかないと。俺が美桜のことを全部知ってるなんて、絶対に知られてはいけない。
美桜があんな凶悪な竜の血を引いているだなんてことを知ったら、きっと悲しいことが起こってしまう。
「呼び方、わからないの?」
空気を読まないジークが、美桜の隣で口を出す。
「いや、あの、まあ」
なんと返事をすればいいのだ。
できれば呼びたくない。そう答えられたらなんと楽か。
「念じればいいんだ。竜の名を心の中で呼んで、自分のところに引き寄せるようイメージすればいい。自信がないなら魔法陣でも使えばすんなり呼べると思うけど」
「じょ……助言、ありがとう」
最悪だ。
絶対に呼ばなきゃ怪しまれる。
仕方ない。呼ぶしかない。
どこで何をしているかわからない、相方の竜を。
お願いだから、これ以上話を複雑にしないでくれよと祈りながら、俺はテラを呼ぶ。
額に拳を当て、意識を集中させる。
呼びかけに応じろ、テラ。
この世界のどこかにいる俺の
残念ながら、緊急事態だ。お前の
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