二次干渉者2
「そこまで知ってるなんて。何者なんだ、君の
「何者と言われても……」
テラはそっぽを向いている。そういえば、
「りゅ……竜だよ。テラは、竜だ。なんでこんな姿で船に乗っているのかは、俺も知らないけどな」
「竜……! まさか。人間じゃ、ないのか?」
「少なくとも、俺が契約を交わしたのは竜だ。黄色の翼竜。どうもこの世界じゃ、“向こう”の常識は通じないらしいな。巨大な竜が人間の姿に変わるだなんて、物理法則に反してる」
「失礼だな。
テラは振り向き、フンと鼻息を荒くした。
……慣れない。
従順とはとても言いがたいが、まがりなりにも俺と契約したあの竜が、目の前の銀髪男だとは。声からして絶対に自分と同世代じゃないというのには納得できた。けど、絶対に近寄ってはいけない系のおじさんに、“
テラ本人はそんなこと、微塵も気にしていない様子なのだが。
「船に乗り込むには、竜のままでは都合が悪かったのだ。こうして再会できたことに、むしろ感謝して欲しいくらいだ」
プライドが高い竜は、主従契約を結んだとしても
「信じられないのであれば竜に戻っても良いが、この場で実行すれば船が壊れる。甲板に出るか……?」
テラは芝山に向かい、どうする、と首を傾げる。
馬鹿馬鹿しいと芝山は小さく言って、頭を掻いた。
「わかった。もう、疑わないよ。本当にいい
「――本当か?」
「この状況で、嘘なんか吐くわけないだろ。同じクラスに……、少なくともボクの他に三人はいる。もっとも……、レグルノーラにいるとき、ボクは常に“
「誰だよ」
「さぁ……誰だったかな。中には女子もいたみたいだけど」
具体的な名前は言えないのか……、言いたくないのか。
どちらにせよ、悪魔の原因となり得る能力――干渉能力を持った人間が身近にいたというのがわかっただけでも収穫だ。
そしてそれが、美桜の力によってもたらされていることも。
「しかし、来澄がその、“一次干渉者”だっていうのも驚きだな。つまりは、周囲に美桜がいようがいまいが、自在に“この世界”に行き来できるということなんだろ? 君もてっきりボクらと同じなのかと思ったら――、違うんだな。まさか上位の干渉者だったなんて。見る目が変わる」
芝山はチラリとテラを見て、またギュッと、唇を噛んでいる。
「
敵意を持っているわけじゃない。
テラも気付いたのだろう、俺を庇おうと広げていた腕をそっと下ろし、ため息を吐いた。
そして背中越しに一言。
「凌、君は“表”でも人望がないのだな」
「ほっといてくれ……」
頭が痛い。
面と向かって、お前なんぞ底辺の底辺に収まっているのが似合っていると言われた気分だ。
「君を砂漠で見つけたとき、何があったのかと色々勘ぐった。あちこち傷だらけだし、息も絶え絶えだった。しかも一人きり。しばらく都市部へ行くことがなかったから、一体何が起きているのか、美桜とのことはどうなっているのか、
言いながら芝山は、さっきまでテラを座らせていた椅子にどっしりと腰を下ろした。スッと足を組むが、どうも締まりがない。
なんだろう、変に身構えた自分が馬鹿らしくなる。
偉そうなことを言っても、相手は同じ高校生だ。
力が認められ、“
芝山は船にいる間、ずっと気を張っているんだろう。でなければ、長い間
「ボクのことは大抵喋ったぞ。助けもした。だから早く教えろよ。君は、芳野美桜の何なんだ」
俺の口元が緩んでいるのに気が付いたのか、芝山は眉間にシワを寄せている。
参ったな。何だか場に締まりがない。
それでも、芝山がきちんと喋ってくれた分、そして砂漠の真ん中で拾ってくれた分を返さなければ。
「わかった……話すよ……」
力を抜き、頭を掻きながら、俺は言葉を探した。
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