初・魔法陣3
み、右手。
こう……か?
手のひらを、サソリに向けて開き、腕を伸ばす。
『方法は至って単純だ。魔法陣の中に書き込む言葉を、何でもいい、頭の中で具体的に唱える。手のひらからその言葉を文字にして引きずり出し、魔法陣に焼き付けていくイメージをする。“こっち”の文字で書き込まなければ反応しない、なんてことはない。要は発動しやすいよう、自分で工夫すればいいのだ。君らの世界の文字でも何ら問題ない。見てくれ云々より、要は発動すればいいのだから』
背中で羽らしきものが始終動いていて、身体全体が揺れているせいもあり、こうでもしないと力が入りそうにないのだ。
ところで、言葉だ。魔法陣に書き込む言葉。
光の……弾、光の弾を連射しろ。光の弾で、敵を貫け。ギザギザのついた光の弾、光弾で。
「“光弾の
『なんでもいい。決まったやり方はない。君の思う通りに』
じゃ……、それだ。
けど、こんなことで本当に、魔法陣が発動、なんて。いいや。考えてばかりじゃなくて、実戦しなくちゃ、何の意味も。
「“光弾の
グッと、右手のひらに力を込める。
文字が、今の言葉が文字になって魔法陣に。魔法……あ、アレ?
「テラ、魔法陣、出ない!」
『“力”の入れ方がおかしいんだ。ちょっと貸してみろ』
……貸して?
――ぞわぞわと悪寒が走り、肩から右腕を通り、右手のひらまで、何かが伝っていく。
鱗だ。
金色の竜の鱗が腕に沿って走り、手の甲まで覆っていた。それはそのまま右手を覆って、俺の手を大きな竜の鉤爪に変えてしまった。
あまりの衝撃に言葉を失い、魔法のことなど吹っ飛んでしまう。
『“力”は、血液と一緒に手のひらまで送っていく。手のひらに描いた魔法陣が傘のように広がったら、そこから魔法を撃つ。魔法を出現させるときに力を入れるのは、――ここ』
と、今度は額の真ん中に激痛。
『精神を集中させ、邪念を飛ばす。そしたらどうだ。空っぽの魔法陣が出現しただろう。そこに、さっきの言葉を書き込んでいく』
自分の力なのかどうか。テラの言う通り、呪文の書き込まれていない魔法陣が宙に現れた。まだ色もなく、輝きもない。
さっきの言葉、もう一度。
――“光弾の
頭の中で強く念じる。
『文字を出現させるやり方は、“こっち”じゃ基本だと思え。“能力”を持っている者ならば、さほど造作もなくできるはず。一文字一文字、ゆっくりと頭に思い浮かべ、手のひらから魔法陣に時計回りに書き込んでいく。難しい作業じゃない』
――“光” “弾” “の”
心なしか、身体の奥底から風が吹き出しているような感覚に囚われる。これが“力”なのか。
一つずつ、金色に光る文字が現れては、魔法陣に書き込まれていく。
レグルの文字だったらもう少し格好いいんだろうけど、あいにく、俺にわかるのは日本語くらい。せめて英語だったら、もうちょっと格好が付くのだろうが、多分、普段から使い慣れている言語が一番いいってことなんだろう。
――“
テラの手ほどきがいいのか、彼の言う通り、魔法陣の周囲が文字で埋まっていく。
――“敵” “を”
そうして、どんどん隙間がなくなっていくと、今度は魔法陣そのものが光を帯び始める。金色に光り、どんよりと曇った砂漠を照らす。
魔力が、増幅してきた。
サソリもそれに気付いたのか、ザザザと数歩後ろに下がる。
――“貫” “け”
『目標を見定め、そのまま一気に力を込める。魔法陣の中心から、魔法を放て』
「了解」
押し出すつもりで右手をグッと、少し前に突いた。
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