最初は、魔法少女アニメを語るパートと、現実の彼女との会話パートの対比を楽しむ作品か……と思っていたが、その構成は予想を超えて妙なるものだった。
魔法少女作品の設定や構成は面白く、話が進むにつれて先が気になってくる。
一方で現実の彼女の行動や言動もまた、時にシュール、時にチャーミングで心地よく各話を締め括ってくれる。
このリズムが実に小気味良い。
個人的には話を読み進めるうちに、エヴァ、まどマギ、最近ならラブライブのブームによって論争が巻き起こったり、様々なサブカルが発生したり、学生達の進路にまで影響を与えている事を連想した。
何かしらの大きなムーブメントに触れたオタクは、暫しの間、空想と現実が入り混じった生活を余儀なくされる。
しかし、それでも何とか折り合いをつけて、自分の人生を順送りしていかなくてはならないのだ。
あれはなんだったのか、自分なりに考え、自分なりに結論を導いていかなくてはならない。
また、この一連の流れはオタクに限った話ではない。
現実世界で衝撃的な出来事を経験した日本中の人々も、あれはなんだったのか、自分なりに考え、自分なりに結論を導いていかなくてはならない。
まるでこの作品の構成のように、空想世界と現実世界を行き来しながらだ。
この先、人生も世の中もどこへ行き着くのか誰にも分からないだろう。
だが「願いを持っていれば」、きっと魔法がかかったように我々の未来は少しずつ幸福へと近づいていくだろう。
この作品は、過去に決着をつける事の出来ない我々を、ほんの少しだけ勇気付けてくれる、実にユニークで、実に誠実な作品だ。
かつて深夜に放送されていた、魔法少女アニメのDVDを見ていたら三次元の彼女が魔法少女になっちゃた!?
おいおい、脳の具合は大丈夫か?
思わず、そんな心配をしてしまう今作だが、さすがにマミったりはしないので安心して読める作品に仕上がっている。
作中でもっともインパクトが強いキャラは、やはり大学の同級生、興梠の存在。炸裂する日朝トークにニヤリとさせられることは間違いない。
そうかと思うと、お約束のやけに作画のいい水着回やら、彼女である清夏との出会いをアニメに重ねてしまったりなどの小ネタも面白い。
平凡な大学生活に飽きた、そこのキミ!!
この小説をぜひ読んでみるといいのではないかね!