徳をエネルギーに変換する技術を得た未来。人類が徳を積み続けた結果、徳がメルトダウンを起こし人類はまとめて成仏してしまう。そしてわずかに生き残った人類は徳エネルギー獲得のために徳を求めて荒野を彷徨う。
SFでは定番の技術に溺れた人類が大災害を起こす話だが、字面が明らかにおかしい。徳ってメルトダウン起こすの?この徳パンクという世界観がブッシャリオンの最大の魅力だろう。
人類を成仏させようとビーム攻撃してくる大仏型機動兵器、徳で稼働するサイボーグ、奇跡で戦うクローン聖人などぶっ飛んだガジェット達が登場するが、設定がSFとしてしっかりと練られているのでハマる人は世界観にずっぷりと浸れる。主人公は現状普通の人間なので意外に地に足のついた話になっている。
おかしな世界観で大真面目な話が展開されているという点でニンジャスレイヤーの影響をかなり受けているので忍殺ファンにもお勧めだ。
現状欠点を挙げるなら序盤地に足がつきすぎてスロースターターなこととキャラクターの弱さだろうか。このあたりは3章終盤から明らかな改善が見られるのでプロローグと1章が面白かった人はぜひ3章の終わりまで読み進めて欲しい。
古橋 秀之 のブラックロッドシリーズを思い出しました。たぶん同じこと感じる人多いんじゃないかと思います。非常に珍しい末法感のあるサイバーパンク系に魔法とか法術とかごちゃ混ぜの世界観大好きなんですがまず目にしないので非常に楽しんで読ませていただきました。功徳を回転エネルギーへと変換する逆マニ車とか発想に脱帽です。いろんな造語が実によく世界観を想像させてくれます。徳エネルギーや徳カリプスなどそれだけ聞くとギャグなんですが読み進めていくと何とも不思議な説得力がありぐいぐいと引き込まれていきます。ぜひ多くの人に読んでもらいたい作品です。