第五部エピローグ

「全行程、準備完了!」

『よし。行けるな?ガンジー』

「行けるけどよぉ……ここ無茶苦茶暑いんだよ!」

 ガンジーは、急造のコクピットでぼやく。

「私も暑いんだから!」

 同乗するガラシャがガンジーに言った。

『行動制限は15分。その間、目一杯暴れろ』

「短けぇな!」

 そして、幾つものトレーラーが継ぎ合わされた異様な車体から、歪な、得度兵器の紛い物が如き兵器が立ち上がる。

「前方、タイプ・ブッダ5。後列にジゾウ3!」

「よし、『護符』を展開。前列から潰す、撃ちまくれ!」

車列から、マニガトリングの光条が得度兵器へ向けて放たれる。

 

 その日、本当の意味で。人間と得度兵器の戦争が始まった。

 力ある者達の献身は。力なき者たちが立ち上がるまでの時を稼いだ。

 得度兵器の北関東における拠点は、奥羽へ派遣した部隊の壊滅と、南方からの侵攻により既に対処能力が飽和状態を迎えていた。

 ……そして、その機に乗じて。

 今まで力を蓄え続けていた者達もまた、動き出した。


 一人の僧侶が、トンネルの口、雪山の麓から、彼方の故郷を見渡していた。

 北の地で起こった戦いを、彼はまだ知らない。仲間達の行方を案ずれど、それ以上は何もできはしない。

 だが、この地の。得度兵器拠点の混乱は、肌越しに伝わって来る。何が起こっていることは分からずとも。『何か』が起こっていることは、おのずと知れよう。

「機は、熟した」

 都市より逸れた空海。肆捌空海は、そう呟き。後ろを振り向く。そこには、修行僧の姿をした若者が続いている。

 モデル・クーカイの錬度には及ばぬが、若者達もまた、力を持つ者だ。彼等もまた、『揺り篭』から旅立つ時が来たのだ。

 混乱状態の得度兵器拠点を、内より攻める。さすれば、遥か北の彼方の。帰るべき場所への道も開けよう。

「……見ていてくれ、壱参空海」

 肆捌空海は、そう呟いた。好機は、今より他に無い。


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この物語は、「黄昏のブッシャリオン」。アフター徳カリプス15年。黄昏の時を終わらせる、達のかたりである。




第五部『習合行路-Return of Syncretism-』完

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第六部『弥勒計画-Stop the ■■■■■-』へ続く

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