第8話「 ・・・・。」


「ははははは!」


瑞穂ちゃんが左腕にピピカちゃんを抱いて大笑いしている。

ピピカちゃんもつられるのか、ェキャェキャ笑うと、再び瑞穂ちゃんの右手の人差し指を咥えてングング吸い始める。


「はははははははは!!」


「ェエ~! ェキャキャキャ!」


さっきからずっとこの調子。

みんなで飽きもせずに二人の様子を見てるところ。

瑞穂ちゃんが言うには、ピピカちゃんは霊気を吸っているのだそうだ。

それがくすぐったくて溜まらないらしい。



ガタゴト揺れる荷台から見える外の光は、穏やかな午後の雰囲気。

中天をしばらく過ぎて、ちょっぴり間延びした、おやつ時の頃かな。

馬車を運転っていうのかな、手綱を握ってるウィンローおじさんがニコニコしながらいうには、あと少しで町に着くらしい。


馬車の荷台は結構揺れるけど、この揺れの中よくグースカ寝ていたもんだ。

昨日の夜、気がついたピピカちゃんのことをようやく説明すると、なんだかみんな妙に納得したようだった。

ムスヒちゃんがいうには、まずおしっこやうんちを全然しないのが気になっていたそうな。

そういわれてみればオムツしてないな。

それにいくら赤ちゃんでも体が小さすぎるとのこと。

それについては真砂ちゃんも疑問に思っていたようで、普通おすわりできるくらいになるまで半年くらいはかかるそうだけど、ピピカちゃんはもう自分でおすわりできる。

だから生まれたてでもないはずで、そこから考えればやっぱり小さすぎるんだって。


見た目すこぶる健康そうだし、体温も体重もあるし、よく笑うけど、やっぱりちょっと変なのかな?

昨日、和さんが言ってた「半霊体」っていうのが関係してるんだろうけど、詳しく調べようとすると服モモンガの子が悲しそうに「コ~・・」って鳴いて小さく抗議してくるので、とにかく町についたら町の魔女さんにも相談してみようってことになった。

ちなみに服モモンガの子は「コーちゃん」っていう名前にした。安易だねアハハ・・。


やがて、ピピカちゃんが、瑞穂ちゃんの指を咥えたままウトウトはじめると、今度は昨日の鶏の鳴き声は一体どうやったのだ?っていう話になった。


「ん? スマホだよ?」


「すまほ?」


それからの展開が凄かったよ。


昨日の通りにスマホに登録してあった、鶏の声聞かせれば、

なんと! すずも妖術を使えたのでございますか?

なんだこりゃ? 電話? 冗談いうな! ありゃ偉い様だけのもんだぞ。

中に鶏が入ってるの? そんなちっちゃい鶏? 出して出して!

おお! これは口寄せか? 鶏など呼べるのじゃな? 次は猫を呼んでみせよ。


え・・?

いやただのスマホ・・ケータイだよ?


「けーたい?」


目の前で操作してみせれば、かがりちゃんは震え出すし、真砂ちゃんはどうなってんだって怒るし、ムスヒちゃんは鶏を出してくれって目をキラキラさせてるし、瑞穂ちゃんは、これも面白そうじゃが、すずの穿いている妙な布を見せてくれとかいうし?

なんのこと? 昨日ししの時脱いでた? パンツのこと?


「ほう。ぱんつというのかや? 見せてたも」


なんでパンツ見せんの!?

っていうかスマホ、床にゴンゴンしないで! 鶏は出ないから!

なんで怯えるの? 昨日はオバケにガンガン向っていってたじゃん!

カバン開けないで!

スカートめくらないで!

ちょっと、も~!!


昨日から、何かにつけてみんなとの会話に違和感はあったよ。

格好もそうだけど話し方とか、考え方とかね。


でもでも、おぼろげながらようやく状況が見えてくるまでかなり時間を要したと思う。


「ごめん、みんな。ちょっと落ち着いて」


両手で場の空気を押さえながら聞いてみた。


「あのね・・あの・・みんなの国の一番偉い人ってどんな人?」


「偉いヒト? 群のオサのこと? 名前知らない」


「お上のことかの? わしも詳しく知らんが嵯峨の方と聞いたかの?」


「殿は斎藤利政さまでございますが・・」


「そりゃ天皇さまだろ? ん? 大正天皇さまだろ? あれ加藤なんとかっていう総理の人かな? まあどっちかだよ」


・・・・・。


オサとかオカミとかトノとか出てきたけど・・そういうことなのね。

まあ、今さらっていえば今さらなんだけどね。


「どうもね・・わたしたちみんな、生きてた・・じゃなくて生きてる時代が違うみたいだね・・」


「・・なんとな?」


「ジダ・・イ?」


「なにいってんだ、すず?」


これ・・って、別に説明してもしなくても状況変んないよね?

でも、なんかみんなキョトンとしたまま続きを待ってるよ。


「あのね・・」


あ~。歴史勉強しとくんだったな~。

しどろもどろになりながらどうにか説明して、なんとなくみんな納得したかなって思うまで、わたしはもの凄く頑張った。


「ふむ・・なかなか面白い話であったすずよ」


瑞穂ちゃんが、大きく二度頷いた。

フ~、それはなによりです・・が。


「それよりも早う、ぱんつを見せぬか?のう?」


「・・・・。」


それよりなの?

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