第18話

「じゃあ、私はそろそろ帰るわねん」

「ありがとうございます、大統領」

 変な喋り方のババアだったけど、思ってたよりいい奴だった。

「幸助ちゃん、あなたの心の中は全部見えてるんだけど……」

 ありがとう、ババア。

「ババアじゃないわよ! 仮にそうだとしても今は小学生の体なんだからロリババアよ!」

 大統領は更年期特有のヒステリックな金切り声をあげる。

「誰が更年期よ!」

 雪哉が一歩進みでて、言う。

「ババア大統領、そろそろ静の身体から出てもらえませんか、目ざわりです」

「あんたたち、見逃してもらった瞬間から態度変わりすぎでしょう!」

 切り替えの早さが僕たちの売りです。

「もうギャグパートに入ったのは解ったけど、本当に気をつけなさいよ。あんたたちの物語をのぞいているのは私だけじゃないわよ」

「どういう意味だ?」

「ふん、じきに解るわよ。じゃあね、雪哉ちゃん、幸助ちゃん。魔法少女の三人もまた今度じっくりお話しましょうねん」

 意味深な台詞を残して、大統領は静の身体の中から去っていった。

 すぐに静が目を覚ます。

「……あれ……わたしなんで……」

「静、気がついたか」

「……ゆきや……そよぎたちも……なんで……?」

 静は首をかしげる。

 しかし、どう説明したものだろうか。「今まで君には異世界の魔法使いの大統領のババアがとりついていたから記憶がないんだよ」と言えば、頭のおかしい人間扱いされることは間違いない。

 すると、雪哉は小声で僕に耳打ちする。

(幸助さん、ここは僕にお任せを)

 確かにこの中で一番静と関係が深いのは彼だろう。僕は彼に任せてみることにする。

 雪哉は静の目を正面から見据え、彼女の肩に手を置いて、真剣な表情で言う。

「僕たちは、今催眠術プレイをしていたからね、直前の記憶が消えたんだよ」

 いや、無理があるだろ。

「……さ、さいみんじゅつぷれい」

 静の顔が一瞬でゆでダコの様に真っ赤になる。

 そして、もじもじと指をいじりまわしながら呟く。

「……そ、その……ゆきやは……わたしにさいみんじゅつぷれいをして、たのしかったのか……?」

 静は落ち着きなくきょろきょろと視線を揺らす。

 すると、雪哉は平然と言い放った。

「いや、別に」

「………………」

「静なんか催眠術にかけなくても自在に操れるからね、特に面白みはなかったよ」

「……ゆきやの」

 僕は前回の経験から耳を塞ぐ。他の三人も既に耳を塞いでいる。

「ゆきやのあほぉぉぉっー!!」

 静は大声を上げて走り去っていった。

 本当に彼らの関係はよくわからない。

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