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『おれの創世記』続き②

「神様。これから何を創るんですか?」
「そりゃもちろん世界さ。」

 そのものズバリを創ってもうまくいかないってのはなんとなくわかった。考えてみりゃ、あの世界の神だって元いた世界にあった物すべてをひとつひとつ創ったわけがない。
 もっと大きな枠組みで、その世界にある物、いる動物、住んでいる人間、コミュニティや物理法則など、そういうのをいちいち細かくイメージしなくてもいいような創造の仕方があるはずだ。

「つまりおれはこれから世界そのものを創造する。そうしたらそこで暮らす人間も街もついでに出来上がるってわけだ。」
「なるほど。」

 そうすりゃ人間の構造とか、おれが知らない女の隅々までもきっと、いい感じで創られるに違いない。だって世界観ってのはそういうもんだろ?

「それで神様。どんな世界を創造するんですか?」
「ふはは。それはもう決めてある。剣と魔法の異世界ファンタジーだ!」
「はあ。」

 おれはおれの部屋の窓の外——まだ何もない真っ白な空間——に向かって手をかざした。

「剣と魔法の世界! まずは地面から! そして空! 海! 山! 星! 魔物がいて、王国があって、冒険者がいて、えーっと、あとは……そうだ! 伝説の剣が必要だろ。城の地下には傷を癒やす泉があって。あ、あとダンジョンには秘宝が眠っていて——」
「その様子だと七日くらいかかりそうですね。」

 おれはおれの知ってるゲームやアニメの世界を、持てる記憶の全てをひねり出して創りまくった。

「ふぅ。こんなもんか。」
「もうできました? 思ったより早かったですね。」
「おう。これは我ながら自信作だぞ。」

 気付けばもうすっかり日が暮れていたが、今まで白いだけだった窓の外が夜になっているというだけでも驚きの変化なのだ。加えて草木のしげる地面に風の音や虫の声も聞こえてくる。
 つまりおれは世界をまるごと創造することに成功したのだ。
 女子高生の制服姿の渚も窓の外の光景を見る。

「これが剣と魔法の異世界ですか。」
「ああ。ほとんどおれが昔遊んだゲームやアニメを参考にしてるけどな。」
「人間も創られたと。」
「もちろん。人間がいなきゃ意味ないだろ。ただ、イメージはざっくりと異世界で暮らしている住人って感じにした。そうすりゃあとは世界観が仕事をしてくれるってわけだ。」
「はあ〜。そういうものですか。」

 だが、さすがにおれも世界をまるごとひとつ創るのは疲れたな。異世界を冒険するのは明日からにするぜ。おれは自分の部屋のベッドにそのまま横になった。

「ちなみにこの部屋は別空間にしてある。おれだけがどこからでもこの部屋に戻ってくることができる。だから安心しろ。」
「はい、神様。わかりました。」

 おれはこの部屋を、おれと渚だけの空間にしておきたかった。

     ◇

 翌朝、早起きしたおれはさっそく創っておいた装備に身をつつんだ。剣を持つ。

「よおし。それじゃ冒険に出発するか。」

 ちなみに、おれのステータスはカンストにしてある。どんな攻撃も受け付けないし、おれの攻撃はどんな敵だろうが一発KOだ。敵兵一万人くらいなら一振りですべてなぎ払える。

「神様。それじゃ面白くなくないですか?」
「この世界は一応、ゲームじゃないんだぞ? 面白い必要はない。安全第一だ。」
「そうですか。」
「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ。神様。」

 おれは部屋の扉を開けて外に出た。

「さてと。この世界には魔物がいるはずだ。そういう風に創ったからな。」

 ここは森の中か?
 おれは剣を携えて森の中の、道とも言えなくもない道を歩いた。
 しばらくして、前方からギシッ、ギシッと地面を踏みしめるような足音が聞こえてきた。

「お。何かいるな? 複数だ。」

 人間の可能性もあるが、魔物の可能性も充分ある。念のため剣を抜いて警戒する。もちろん今のおれは攻撃を食らったとしても痛くもかゆくもないはずだが念のためだ。
 やがておれは緑色の皮膚の子供くらいの背丈の魔物の姿を目でとらえた。上半身裸で手には棍棒を持っている。

「あれはゴブリンだな。」

 世界を創る時に『魔物がいる』とイメージしたが具体的にどんな魔物がいるかは考えてなかった。結局ゲームに出てくるような魔物になったらしい。
 ゴブリンたちはおれの存在に気付くと、奇声をあげて殴りかかってきた。

「これで友好的だったらどうしようかと思ったよ。」

 おれは躊躇なくゴブリンに向けて剣を振るった。
 斬撃でザザッとゴブリンの一体が半分に切り裂かれ、その場に倒れる。
 
「おお! 俺強え!」

 おれは二撃目の斬撃を放った。さっき斬った隣のゴブリンが血を吹いて倒れた。
 三撃目、四撃目。おれはあっという間に全てのゴブリンを倒すことができた。
 よし。これでおれがこの世界で最強なのは確認できたし、次は人里に行ってみよう。村か、街か。この辺りにあるだろうか?
 一応、国とか城とか王様みたいなものも創られているはずだ。王がいれば姫もいるだろうな。
 そういや、この世界を創った目的って、女……じゃなくて、この世界の人間と交流するためだった。
 まず、受け入れられるかどうかだよな。

「ま。おれ、神様だしな。」

 なんとかなるだろ。ははっ。

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