──とある山奥の古民家、冬の夜。囲炉裏の火がパチパチ鳴ってる。
窓の外は雪が降ってるけど、中はほんのりハーブの甘い煙で満ちてる。マリーはでかい鉄鍋で何か煮込んでて、ときどき「もうちょいだよ〜」って笑いながら蓋を開ける。
いい匂いがふわっと立ちのぼるたびに、床に座ってるみんなが「おお……」って顔を上げる。七人の友達(御使いって呼ばれてるけど、ただの常連)が順番にでかいジョイントを回してる。
火が点くたびに部屋がちょっと赤く染まって、誰かが「うわ、火の柱みたい」とかボソッと言うと、みんなでクスクス笑う。一人が吸って「理性三分の一……なくなった……」って呟いたら、
隣の奴が「羞恥心も三分の一持ってかれたわ〜」って肩に頭乗せてくる。誰かが落としそうになって「あ、ダメ!」って慌てて灰皿に落とす。
「悔しい……もう一本行くか」って言いながら、新しいのを巻き始める。
その手つきが妙に丁寧で、みんなで見守ってるうちに自然と拍手が起きる。鍋からイナゴの佃煮が出来上がって、みんなで「いただきまーす」って箸を伸ばす。
甘辛いタレが口の中に広がって「うまい……これが救いだ……」って誰かが本気で言う。レゲエがかかってて、たまに誰かが「Jah!」って叫ぶと、ディレイがかかったみたいに他の奴らが遅れて「Jah……!」って返す。
そのうち笑いが止まらなくなって、床に転がってる奴まで出てくる。雪は降り続けてるけど、誰も寒くない。
誰かが「外の人はほっとこうぜ」と言うと、みんな「うん、そうだね」って頷く。最後にマリーがでかいボングを差し出して、
「はい、ふたりずつ吸ってね」って微笑む。吸い口がふたつあるボングを、みんなで順番に回す。
煙を吐くたびに、誰かが「420……」って呟いて、
誰かが「それ、数字の答えだったんだ……」って笑う。ただそれだけのこと。争いも、怒りも、焦りも、何もない。
あるのは暖かい部屋と、いい匂いと、笑ってる仲間たちだけ。これが、モク示録の全部だった。外は雪。
中は永遠に続く、ゆるい夜。