設定を考えるのは楽しいものです。時間を忘れて没頭してしまいます。その瞬間が物語を紡ぐ上で最も楽しい時間であると言っても過言ではありません。
凝れば凝るほど面白いものになってゆくという感覚を得ます。本編で登場しない地図を用意したり、各都市の機能を考えたり、そういった裏設定を考えると自分がプロの作家になったように感じられ、才能があるように錯覚できるのです。いわゆる麻薬です。麻酔薬の間違いでしょうか。
風呂敷を広げるほど畳むのは難しいものです。設定づくりの時にはそのような問題は度外視し、単純に面白さや目先の欲求に従って動いているため、問題に直面した時、心が折れないように伏線回収を諦めます。それが駄作を量産することになろうとも、物語が下火になるよりも批判覚悟でバッサリと終えたほうが気持ちが楽になるからです。手間をかけた伏線回収は会話主体となり冗長になることがほとんどですので、それがわかっているからこそ、楽な方向に逃げようとするのです。
楽しいことは自分にとって良いことですが、周囲にとっては必ずしも良いことではありません。先々のことを関画れば、自分にとっても良いことではないのかもしれません。未来を憂えて筆を遅らせるよりは、勢いに任せて書き上げてしまったほうが気持ち的には楽かもしれませんが、後々苦しい想いを抱くことは避けられません。
物事には何にでも一長一短があるものです。その中で自分にとって良いものが何か、少しでも後悔しない選択ができれば、人生は楽しいものになるのではないかと考える今日この頃であります。