誰もカッコのつけ方なんて気にしていないのでしょう。「」と『』の使い分けなんてものは読者が読みやすいようにすればいいだけで、明確に『電話越しの声はこっちを使って、手紙とかの文章はあっちを使って……』と区別するルールはありません。拘っているのは作者だけなのです。それが会話かアナウンスかなんてことは文章で説明すればよいだけであり、カッコでわかりやすく、などと言い訳するのは技量不足を露呈していることと同義です。恥晒しなのです。
私は恥を晒してでも技量不足を補いたいため、カッコの使い分けをメモして間違えないように努めております。しかし、一度間違えてしまえば、わかりやすさのために使っていたはずの道具は、いとも容易く混乱を招く凶器へと早変わりします。諸刃の剣なのです。ゆえに、決して用途を間違えぬよう、カッコの取り扱いには細心の注意を払っております。これはそう、一種の呪いなのでしょう。
カッコ付けなんてものは周囲からよく見られたいという虚栄心を満たすための行為に他なりません。行き過ぎた使い分けは自分の首を締めるばかりで、読者の読みやすさのことなど微塵も考えていないのです。初心を忘れてしまっているのです。
シンプルイズベスト。カッコを付けるには基本に忠実に、凝り過ぎに注意ということでしょう。程々に肩の力を抜いてゆければ、カッコが馴染んでくれるようになるのかもしれません。