戦闘の合間に会話を差し込みがちになります。これは地の文あるいは会話が長々と続くことによるテンポの悪化を防止するために行っており、例えば戦闘中にも拘らず会話が長々と続いていると、『こいつら戦闘中に何お喋りしてんるんだ?』と違和感を抱き、また、地の文が長々と続くと作者として読んでいても非常に疲れます。地の文は会話よりも堅くなりがちなので、会話よりも読むのが疲れるというのは往々にしてあることなのではないでしょうか。
ゆえに、折衷案として戦闘を描写する地の文の間に会話を差し込む形になるのです。これはこれでテンポが悪くなるのですが、作者側としてはどうしても登場人物に語らせたいことがあるのです。相手との軋轢や因縁など戦闘までの流れでうまく説明できていれば良いのですが、自然な流れや説明口調を避けるほどそれは難しくなり、とうとう戦闘にまで辿り着いてしまい、苦肉の策として戦闘中の会話という形で差し込むのです。技術不足が生んだ忌むべき形式なのです。
「私はこの悪しき風習を断ち切りますッ!」
六畳間で一人声高に叫ぶと、私は筆をとった。脳細胞を躍動させ、世界観や登場人物間の因縁といった読者へと事前に伝えておきたい事柄を、説明口調とならぬように物語の端々に自然と差し込んだ。読者の記憶へと無意識に植え付けるためだ。
「うあッ!」
私は筆を落とした。カタン、と冷たい音が鳴り、人間の無様な呻き声が部屋に虚しく響き渡る。
「私には……できないッ……!」
床に落ちた筆を拾い上げ、私は朦朧とした頭を振る。
「邪念を払えッ……! でなければッ……!」
不可能――脳裏にその言葉が過った瞬間、私は手に力が入らなくなった。
「もう、駄目……かッ……!」
私は居心地の良い夢の中へと堕ちていった。最後に、誰へ向けたものかわからない遺言だけ残して――
「気持ちだけでは、どうにもならないッ……!」
悪しき習慣を断ち切るためには、そのための手段を講じなければならないと、その具体的対策案について考えをまとめてから行動に移さなければ、どれだけ気持ちが先行しても結果は伴わないと私は実感した。