• ホラー
  • 詩・童話・その他

短編「侵食」を書き終えて。※ネタバレあり

私はずっと、「人間がいちばん怖い」という感覚をどう物語に落とし込むかを考えていました。
その中で辿り着いたのが、二重の構造です。

ひとつは、誠人のように分かりやすい怖さを持つ存在。虫やグロテスクな趣味、奇異な嗜好など、周囲からすれば強烈に不気味だけれど、必ずしも直接的な加害性を持たない。露骨だからこそこちらも避けられるし、むしろ「怖いけれど無害」という領域に収まる。

もうひとつは、母のように明確な悪意を内包しながら、優しげに近づいてくる存在。外側は穏やかで、家庭的で、だからこそ受け入れてしまう。その裏側に加害性を潜ませ。にこやかな「内緒ね」が、内に隠した呪詛となって絡みつくのです。

この「無害に見えて害を持つ存在」と「有害に見えて害を持たない存在」を並べることで、人間の怖さは際立ちます。異常さそのものより、日常の顔をした悪意の方がはるかに残酷で逃げ場がない。その対比を描きたかったのです。

つまり虫は題材の一例に過ぎず、本当に書きたかったのは「人は見かけによらない」という恐怖の構造そのものでした。

長々と書いてしまいましたが、これからも自分なりに物語を紡ぎ、執筆の時間そのものを楽しんでいければなと思います。

あ、カシューナッツと鶏肉の唐辛子炒めは本当に美味しいですし、よく行くアジアン居酒屋のメニューです 笑
中華の鶏肉とピーナッツの唐辛子炒め、宮保鶏丁(ゴンバオジーディン)のような感じですね。


侵食
https://kakuyomu.jp/works/7667601420104408530

5件のコメント

  • 確かに見えない悪意が怖かったです。
  • 鋏池穏美さま

    こんにちは。
    拝読して、このお母さんの怖さの一段上に、もしかして誠一さんがいたりしないかしらなんて深読みしておりました。
    つまり、お母さんの怖さは「無害に見えて悪意から害をなす存在」、誠一さんの怖さは「無害に見えて善意から害をなす存在」みたいに。虫を食べさせていることをうすうす知っていたけれど、昆虫食は体に良いのだから母さんの親切に任せておこう、なんて心底彼女のためを思い……((((;゚Д゚))))
  • 七月七日さま、コメントありがとうございます。

    もしかすればすぐ近くに……
    笑顔の悪意が潜んでいるかもしれませんね(´◉ω◉` )ジィ
  • 佐藤宇佳子さま、コメントありがとうございます。

    書かなかったことまで佐藤さまに言い当てられ、震えています 笑
    実は裏設定として、誠一や父にもよろしくない設定をしていました。といっても、作中でほとんど匂わせていなかったはずなのに……|´-`)チラッ

    裏設定
    ・誠一の場合は「母を疑うことがない、盲信による他者への無自覚な加害性」
    ・結婚してから、徐々にその無自覚な加害性があきらかになる

    ・父の場合は「嫌いなものへの激情的な加害性」
    ・普段は息子の趣味だからと我慢しているが、釣りに同行した際にその片鱗を垣間見てしまう。釣りの餌(イソメという虫)を潰したり千切ったり……

    もしかして佐藤さま、エスパーですか?笑

    いつも丁寧に読んでくださり、ありがとうございます( ´ω` )
  • 鋏池穏美さま

    こんにちは。拙作のほうへもコメントをありがとうございました!
    ああ良かった……。実は、ついコメントでいらぬことまで書いちゃって「そんなこと書いていません」と言われることが最近あったので、突っ込みすぎるコメントは控えておこうと思っていたのです。
    でもこの近況ノートを拝読した時に、やっぱり、「それだけじゃないよね?」という気持ちがむくむくと。
    僭越ながら、鋏池さまの暗さと私の黒さは時に共鳴するのかもしれませんね。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する