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(詩)影を失ったあの景色


この思い出の場所は
時代の流れのなか
変わった

ここには
大きなショッピングモールが建設中で
これからたくさんの移住希望者が
やってくるのだろう

君と過ごしたこの場所は
もう
この目に映らない
色の褪せた写真に
少し背伸びした
真面目な顔の二人と
その景色が
確かに在った軌跡として
映るだけだった

町は変わっていく
時代の流れは
今の僕たちを追い越して
未来へと進んでいる

ずっと変わらないものと
願っていた僕たちの
思い出は
少しずつ消えていく

宝物のように大事に
仕舞っていた記憶は
その箱を開けるたびに
乾いた風に吹かれ
忘れられていくのだ

僕の人という道は
君が待つ所まで続いている
残りの命は
還るべき場所を目指している

雨が降る
くもりがかった窓の外は
寂しく
影を失ったあの景色



※【詩集】sign に収録



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