ぼくの空は
180度、向きを変えた
昨日までのやさしさは
裏切られた愛
見捨てられたぼくは
地上にくっ付いたまま
空を見上げている
もう
何十年も経って
ぼくが空に居た頃など
夢だったような感覚
いつの間にか
ぼくは地上に慣れて
人間としての
嗜みはわきまえるようになった
少しずつ大人になったんだ
でも
少しずつ死に向かっていたんだ
成長の裏側に
死ぬということが隠れていた
いつしか
すべての事象が
どうでもよくなって
空を見上げることも忘れて
死を恐れるようになった
永遠のような時の流れの中
ぼくは空に生きていた
この地で
短い命をいただいて
何を成すことができただろうか
因果の連続に
ぼくも歯車として組み込まれ
やがて
ボロボロになったぼくは
使い物にならない骸《むくろ》
ひとりの空に大きな自由を描き
羽ばたいていたぼくと対称的に
今のぼくは
幾度となく輪廻を繰り返し
この生命《いのち》の
生きられる時間を
ただ
生きることしかできない
※【詩集】sign に収録